
四国遍路の何がこんなに私をひきつけるのでしょう。そんな魅了するものは、これだと一言では答えられないけれど、なぜか惹かれます。見えないものに導かれるように、今年のゴールデンウィークは、どんな山行の誘いも断り、四国に来ました。その犠牲(?)になった夫も、仕方なし(?)に私と一緒に3日間だけ遍路することになったのでした。 今回は、43番明石寺のある卯之町から歩きます。ここまで乗ってきた夜行バスが来た道を、今度は歩いて戻るのですから、考えてみると全く変なことをするものです。さらに、国道やトンネルを歩けば早いのに、わざわざ時間がかかる大変な山道に入ったりするのですから、変わり者だと言われるのでしょうが、これが歩き遍路の特徴です。私は好んで遍路地図の赤い‘‘・・・・・・’’(遍路道はこのてんてんマーク)の遍路道を歩きます。 静かな鳥坂峠を通り、大洲に出て、12時半頃十夜ケ橋に着きました。参拝を済ませ橋の下に行くと、お大師様が何枚もお布団を掛けて横になっておられます。お布団に埋もれたお大師様の顔を覗き込みながら「お布団の数がスゴイネ」と振り向くと、夫は「うん、スゴイナーこの鯉」と横を流れる川を覗き込んでいます。まるで見るところが違ってがっかりしましたが、鯉が餌を貰おうと、びっくりするほどたくさん寄ってきていました。 コンビニで休憩していると、またひとりお遍路さんが通っていきます。歩き始めて数時間で5人もの遍路に出会いました。やはり春は遍路が多いのですね。お遍路さんを見送りながら、自分も今、楽しい旅をしていることを実感していました。 JR五十崎駅から内子に出る‘‘・・・・’’の遍路道に入ると、私を立ち止まらせる美しい景色になりました。この時期、田圃はレンゲで一面ピンクですが、ここはピンクに黄色の花が上手く混ざって、私の好きな色合いなのです。鳥のさえずり、そして新緑のさわやかな風に吹かれ、我を忘れてこの小道にたたずみました。この素朴で美しい景色に抱かれながら、きっと一番いい時期に、この道を歩いているのだと思いました。やっぱり国道志向ではこうはいきません。 初日から歩き遍路の醍醐味をあじわい、今日のお宿がある内子に着きました。ここは情緒のある古い町並みです。遍路道から少し離れた保存地区まで足をのばしました。教えられたとおり行くと、連子格子のある民家や、なまこ壁に囲まれた家並みが現れました。戸を閉じれば雨戸、開ければ広縁になる構造は実に機能的です。ずっと坂をのぼっていくと、道に座っていたおじさんが家のお庭を見せてくれるといいます。遠慮無しに、ずっと裏まで続く通り庭を通って見せてもらいました。表に出てからわかったのですが、ここは中芳我邸で、さらに本芳我邸・上芳我邸と、どれも立派で当時の富を感じました。 夕暮れの古い町並みを歩きながら、歩き遍路の初日が過ぎていきました。 |