
7回目になる区切り打ちの今回は、結願に向けての秋遍路です。7時半伊予西条駅を降り立った私は、はやるこころを抑えようと、石鎚山の方を向いて大きく深呼吸しました。気負うことない、歩けるところまで歩かせてもらおう・・・そう思いました。 実は今回、何だか今までのような元気がなく、いささか弱気なのです。今夏の天候不順のせいなのか、加齢からなのか、ずっと体調がすっきりしません。びっくりするほど老眼が進み、疲れやすい上に肝心の地図が読みづらい。まったくなさけない、悲しいことなのですが、落ち込んでいるわけにはいきません。なかなか手強い‘更年期障害?’というヤツを何とか巻いて、頃合いを見計らって四国に来たのでした。 実に爽やかな秋晴れです。遠くの山なみが、青空が、爽やかに吹く風が、「また歩きに来たね」と優しく歓迎してくれます。心配していた地図も裸眼でも大丈夫。この先どうしようもなく足が痛くなり孤独感と戦うことになりますが、「快」と「楽」だけの今は、足の裏も機嫌がいいのです。こうして大自然に溶け込んでいく心地よさを感じながら、だんだんお遍路のこころになっていきました。 今日は、別格がひとつありますが札所はなく、国道11号に平行した旧道を通りながら東へ35km、伊予三島まで歩きます。 早速オートバイが私の傍らに止まりました。日本人と思えない男性がコンビニの袋を差し出します。ためらいながら受け取ると、合掌しながら「ガンバッテクダサイ」と短く言い、あっという間に行ってしまいました。自分用に買った物を下さったのか、それとも私のために買って下さったのか、いずれにしても頭が下がる思いです。結願寺までどうしても歩き通したいという私を応援して下さる気持がその短い言葉から伝わり、暖かいこころに打たれました。 今は無きいざり松が有名だった番外延命寺で食事をとりました。お接待で頂いたハンバーガーとお茶です。お接待下さった美容室のおばちゃんは、私ぐらいの娘がいるといっていました。きっと疲れた顔をして歩いている私と娘さんがだぶって見えたのでしょう。別れ際には、「頑張りなさいよ」って私を抱いてくれました。そして歩き出して間もなくのことです。「気をつけて行くんだよー」と背中越しに聞こえ、私はお四国のお母さんに大きく手を振りました。こんなにも私のことを心配してくれる人が四国にいたのです。忘れられない一期一会でした。 また、御殿のような家に住むお母さんにも出逢いました。「金婚式の記念に大屋根にもうひとつ屋根を造ったんですよ」。屋根を見つめるお母さんの目は遠い昔を思い出しているようでした。別れ際には蜜柑と柿をそれはどっさり持たせて下さり、ザックもこころもパンパンではちきれんばかりでした。蜜柑は道中の口を潤おしてくれ、柿は宿で剥いて雲辺寺の降りまで持ち歩きました。空腹感を満たしてくれどれだけありがたかったかはいうまでもありません。 こうして私のこころはどんどん充電されていきました。見ず知らずの私を心から励まして下さるそのお気持は何にも換え難いものです。苦しくても歩く力となることを何とか伝えたいのですが上手く言えず、ただありがとうと笑って答えるだけの自分をもどかしく感じたりもしました。 5時頃、三島郵便局前にある宿に到着しました。欲張って歩きすぎたので疲れましたが、初日からたくさんのお接待は心温まるものでした。感謝いたします。合掌。 |