
千数百キロの道のりを歩き通せるとは、思ってもみないことでした。発心の道場(徳島県)で体調を壊したとき、この距離は私には無理かなと弱気にもなりましたが、それでも諦めず歩いていると、有形無形の出逢いから、自分ひとりの力だけで歩いているのではないことに気づかされていきました。
時に、足や肩が痛くて苦しんだり、大雨で泣きそうだったり、ひとりでさみしかったり、怖い思いで山道を歩いたり、つらいことも数えれば切がないですが、それ以上に、四国の方のお接待や優しさ、遍路道ののどかさ、同行の心強さ、お寺でのこころのやすらぎ・・・これらからどれほど「歩き続ける力」をいただいたのか計り知れません。 「つらい歩き」から始まったお遍路が、徐々に「歩くことがたのしい・うれしい」に変わっていき、さらに「歩けることがありがたい」と様々な出逢いに感謝できる自分になっていくという、お遍路には不思議なマジックが隠されていました。 終いには、どうして歩いているだけで毎日こんなに素晴らしいことに出逢えるのだろうと思わずにはいられませんでした。偶然の出逢いがもたらしてくれた幸運に、ただただ感謝できることがこんなにも気持ちよいことだとお遍路に出て初めて知りました。興味本位で始めた歩き遍路に、こんなにも自分を見つめられるような感動の出逢いがあるとは想像以上でした。
同行二人、いつもお大師さまが導いてくださったと思えるお遍路でした。様々な出来事は、病気になったことも含め、偶然ではなく(必然)私のために出逢うべくして出逢ったと実感させられるものばかりでした。 これからも私の人生に様々な事が起きますが、感謝の気持を忘れなければ、きっと楽しく歩き(生き)続けることができると信じます。
果てしない道のりを歩いたお遍路が終わり、長い長い時間を費やした遍路記も終わりました。計らずも、室戸岬で涙したときのことを思えば、精神的に強くなった自分を感じることができます。様々なことに気づかせて下さったお大師さまをはじめお遍路でお世話になった方々、私を導いてくれた遍路シールや遍路地図を作成して下さったへんろみち保存協力会、私を元気付けてくれた四国の景色や晴のありがたさを教えてくれた雨や一緒に歩いてくれた犬たち、この遍路記作成まで応援してくれた藤田さん、そしてお遍路に出してくれた家族に、こころから感謝いたします。お遍路に出られた私は果報者でした。合掌
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