
信心深い訳でもないのに、何故、歩き遍路を始めたのか、私自身まったくわかりません。しかし非常に興味を引くものがものがあったのです。 名古屋から夜行バスにゆられ、早朝、徳島のどんよりした空の下に降り立ちました。まぶしい日差しを浴びることを想像していた私は、お遍路の手強さを感じました。このようなシチュエーションの中、私は未知の世界に導かれて行きました。 板東駅に降り立つと、あいにくの雨です。ついていません。それでも発心したのですから1番札所に向かって歩きました。 1番札所霊山寺に着いたのは6時半前。まだお寺は閉まっています。ちょっと肌寒いなか、どうしていいのかわからない新米遍路の私は、山門前に立っているハイヒール姿の不思議な遍路マネキンをじっと見つめていました。 巡拝用品取扱所が開くと、初めての方はこっちこっちとベルトコンベアーに乗せられた感じで用品を買い揃え、どうにかほっとしました。基本的な礼拝作法も教わり、これで何とかなりそうです。人の真似をしながら今習ったばかりの礼拝作法でお参りを済ませ、暗い雨の中を2番札所に向かって、とうとうひとり歩き遍路を始めたのでした。 それにしても雨の国道歩きは想像以上で参りました。車が通るたびに水が跳ね上がり、気をつけていないとずぶぬれになります。雨の装備を整えていったのに、なぜか雨具の上に着るようにとすすめられた遍路ベストが雨で重くなり最悪でした。(写真)そうしなければいけないと新米遍路は真面目に教えに従ったのですが、今考えるとまったくおかしいです。 さらに雨の中のお参りにも難儀しました。お線香やライターをだめにしたりで、自分は何をしに来たのかと泣きたくなりました。歩き遍路をまったく知らない新米遍路は、ちっとも楽しくもないこんなこと続けられそうにないとお寺に着くたび思いました。
道に迷いながらも、今日の最終予定地の8番熊谷寺を見つけたときは、あった、あった、あ〜よかった〜と思いました。ここに至るまで心細くて何度立ち止まったことでしょう。あたりを見回してもこの雨です。尋ねる人もいなくて、頼りは自分の判断力だけでした。大丈夫だと自分をなだめ励ましました。自分の判断で歩き始めた道が、結果的には正しかったとわかったときは、大袈裟なようですが、よくやったと自分を褒めていました。 くたくたになって第一日目の宿に到着。何もかもずぶぬれで、あげていただくのに恐縮しました。定年退職された歩き男性遍路ふたりと同宿です。夕飯のときには、今日の苦労話に花が咲きました。
その夜、私に歩き遍路をすすめてくださった藤田さんに携帯メールで今日のことを報告しました。返信メールでは無鉄砲といわれましたが、くじけず明日も歩こうと思うような励ましを頂き心強くなりました。 興味本意で始めた私に、歩き遍路の厳しさを教えるための雨だったような気がします。試されているような。想像以上に大変で初日からぐったりでした。
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