2012立山④

平成24年9月17日(月・敬老の日)[E:typhoon]→[E:sun]

風の唸る音で目が覚めた。5:30起床。6:00朝食。

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さて、今日は黒部ダムの方へ降りようと思う。小屋番に道の状況を尋ねると、最近親子のクマを見かけるので注意するようにと教えてくれた[E:bearing]

昨日雄山でもらった赤い札の鈴をクマよけにザックにくくりつける。さらに夫は笛を首からぶら下げる。これでも出会ったら、やられるか、戦うか(夫が)、逃げるか・・・・。そういえば昨日のルート上にクマ目撃情報ありだっけれど、そんなこと忘れて歩いてた。

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                    クマよけに役立つかな?

 

7:40 クマ対策装備で一の越山荘(2705m)を出発。外に出るなり猛烈な風でたじろぐ。ダウンの上に雨具を上下着こんでいても寒い。もちろん手袋2枚。暴風が容赦なく体感温度を下げる。稜線はもっと寒かろうに。

 

 

東一ノ越に向けて歩き出すと、3人のパーティーがやってきた。これは幸い(クマよけ)とばかりに先に行ってもらう。

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実は夜中から気分が悪かった。食べ過ぎかムカムカと気持ち悪く眠れなかった。室堂に降りてバスに乗って帰るという選択肢もあるけど、念願のルートに背を向けるのはしのびない。谷に入れば風はやむはずだからとちょっと無理して歩き出す。力が出ず先のパーティーにどんどん離された。クマがひょっこり出てくるかも?

 

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                      ゴゼンタチバナ

 

Cimg1876 小一時間歩いたころ、東一ノ越が見えてくる。静かな登山道は我々だけ。快適。

 

Cimg1877 8:30 東一ノ越(2480m)着。先客が休憩していた。気がつけば気分もすぐれ、私はすっかり元気になっていた。雨具上下・ダウン脱ぐ。

 

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南のほうに見えるのは黒部五郎だろうか・・・イジワルな雲が峰々を覆ってわからなくしてるけれど充分楽しめるものだった。
やっぱりこっちに降りてきてよかった。人ごみに入っていくのは少しでも遅くしたいから。

 

Cimg1884                 東一ノ越から黒部湖方面の景色

 

9:05 黒部湖に向って急な坂を降りる。黒部湖までの標高差972m。黒部湖やロープウェイの大観峰の駅を見ながら降った。

 

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珍しい花ではないがミヤマリンドウが目に止まる。
立山三山を首が痛くなるほど見上げる。アレは雄山だろうか、それとも大汝だろうか。昨日歩いた峰を愛おしく眺める。

 

登り1名あり。黒部湖から東一ノ越までの標高差を考えると私は登らない。登った先に今のところ魅力あるものがないし。
 

 

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登山道に咲くリンドウ(左)とトリカブト(右) 秋の花は紫が多いかな?

 

Cimg1895 黒部湖まで下り一辺倒だと思ったら、ハシゴの登りあり。このハシゴは段が歯抜けになっておりすいすいとは登れなかった。この先も少し登って樹林帯に入っていく。

 

樹林帯に入ると夫はクマよけの笛をよく吹いた。一方私は手拍子付きで
「ある日、森の中、クマさんに出逢った、花咲く森の道 クマさんに出会った
[E:note]」
「お嬢さん、お逃げなさい~ラララランランランランラ~[E:note]」と歌う。エンドレスで歌い続ける。

Cimg1896歌も飽きてきた。爽やかな秋空に向って大きく伸びるシシウドに「ココって、いいところだねぇ」と話しかける。

 

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はるか上から見下ろしていたロープウェイを見上げるところまで降りてきた。観光客に
「うわぁ~い、こっちも楽しいよぉ~」と大きく手を振る。人工物を間近にしながらコーヒータイム。その間に5~6人降っていった。登山者が少なくって、ここは本当にいいコース。

 

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小一時間ほど樹林帯を歩いて黒部平(1828m)に出た。11:30
ここからロッジくろよんまでさらに歩く予定だったが、文明の利器の誘惑に負け、黒部湖までケーブルで降りることにする。 

 

その前に、予定になかったが黒部平の展望台に上がる。 

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すると昨日縦走した立山三山と今降りてきた東一ノ越からの景色が「どうだ!」と言わんばかりに立ちはだかっていた。こんな景色を想像していなかったので、このサプライズに、ワンダホ~と大声で叫び(たかった)、喜びのダンスも踊れるくらい興奮した。 なのに夫は冷静。チョットチョット!なんでもっと喜ばないの?と夫にくいつく私。

 

Cimg1903今度は黒部湖を眺める。「それにしても黒部湖の水、少なくない?」「高い所から見ると少なく見えるのかなぁ」と言いながら降りてきたのだけれど、その通り本当に少なかった。梅雨時の雨量の少なさで雪が解けなかった影響なんだと思う。水位低下ということで遊覧船は運休という張り紙がアチコチに貼られていた。

 

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黒部平から扇沢までの切符2340円を買い、ケーブルカーで黒部ダムに降りた。ちなみ立山駅から扇沢までの通り抜けは8060円。その内の室堂からここ黒部平までの3360円を今回歩いたというわけ。

 

F1000034 ダムに着くと、さっきまで冷静だった夫は眼の色を変え、かぶりつくようにダムをのぞく。それに比べ私は夫ほど興奮していなかったような・・・。これが男と女の価値観の違いというものなのか。温度差を感じた。

 

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放水ショーは迫力あったけれど、私は立山三山の景色の方に軍配が上がる。
このとき皮肉にもカメラのバッテリーがなくなり携帯撮影になってしまう。

ここなら10年20年後も生きていたなら来れるから、天気を狙ってまたこの景色を見に来ようと思った。そのときは室堂まで大枚はたいて行ってやろうとも思った。紅葉の時期がいいな。

 

夫は3回目らしいが、私は2004年に欅平から下ノ廊下を上がってきて以来2回目の来訪。でもそのときは12~3時間かけて雨の中、黒部川を遡ってきたのでクタクタでダムを見学していない。着替えてすぐトロリーバスに乗って帰ってしまった。だから今回は一の越からこっちに降りて見学したかったの。

 

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展望台までの長い長い階段は登山並みの登りだった。展望台というだけあって景色は素晴らしく、このお天気が私を更に山好きにさせたのだった。こっち(一ノ越→ダム)に降りてくるという選択肢は大正解だったと思わずガッツポーズ。ヨッシャー!

 

立山・黒部はまだまだ開拓の余地があると感じた。下ノ廊下から上がる口を確認してダムを後にした。

 

出発地  :一ノ越山荘 2705m   7:40発
到着地  :黒部ダム    1508m      1:35まで滞在 
 
標高差  :  A   185m                 28分      
        D   1358m          2時間53分              
行動時間:                            5時間31分

 

 

Cimg1914 1:35ダムからトロリーバスに乗って扇沢に出て、2:00のバスに乗って信濃大町に着いたのは2:35。

 

そして信濃大町駅15:22発ワイドビューしなの84号に乗って終点名古屋駅に着いたのは18:34だった。

 

長い旅だった。いつものことながら欲張った旅だった。そんな私に不機嫌ながらも付き合ってくれた夫はさぞ大変だったと今になって思う。ごめんねとありがとうです。いつまでも旅ができるふたりでいたいと思った。

                                      おしまい

 

 

2012立山③

ルートはこちらを参考に⇒ここをクリック

 

 

別山乗越(標高2760)から30分ほどゆるく上がっていくと別山(標高2874)に到着。広いピークで社がある。ここまで来れたことのお礼とこの先の安全をお願いする。そして剱岳の眺めが良いという北峰(2880)へ移動。途中の硯が池は涸れていた。

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10:40 別山北峰着。ここは剱岳に一番近い場所。先客の背中が至福の時をあじわっていることを物語っている。ここで湯を沸かしてコーヒータイム。 11:20まで我々もまったり過ごす。

 

Cimg18252img_4257コーヒーカップを手に持ちアチコチ眺める。剱沢を覗きこむと剱沢小屋と剣山荘も確認できた。いつかあそこを通って裏劔に行きたいと思っている。

 

Cimg1823望遠撮影してカメラで更にアップで見ると、頂上にはたくさんの人だかり。カニのタテバイと思しきところは長蛇の列(写真をクリックするとわかります)でびっくりした。一度は登っておきたいという人が連休に集中するから大渋滞となるわけだ。因みにこの日の槍ヶ岳穂先も長蛇の列で、ピストンに4時間かかったらしい。 それに比べここ別山北峰は人は少なく快適空間だった。

 

 

 

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別山に戻ると雄山から来た人と合流する。もう一度お社に安全祈願してから雄山に向けて歩き出す。

 

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雄山までの縦走路が一望。ほれぼれと眺める。次の目的地の真砂岳までコースタイムは55分。

 

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真砂乗越から来た道を振り返る。稜線上の紅葉が色づき始めている。

 

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そして室堂方面は箱庭のよう。今朝出発した雷鳥荘からずいぶん来たことがわかる。

 

この頃から大日岳方面からガスが湧きはじめ、真砂岳に着くころには稜線は見通しが悪くなる。 

 

「この道を行けば別山に行けるか?」と対向者の何人かに尋ねられた。説明するにも目指す山が見えないので説明しにくかった。

「明日剱岳に登るので剱沢テント場まで行きたい」という相談もあった。するとそこに「私も明日劔に登るのでそこの小屋まで行きたい」という男性も加わったので、別山を過ぎてから剱沢に降りる道を見落とさないように一緒に行くことを奨めた。他人同士なので歩くペースの問題はあるだろうけど、道を見落としとんでもない方に行ってしまうよりはいい。見通しがよければ間違えない道もホワイトアウトになると方向感覚がおかしくなり間違えやすい。

 

 

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真砂岳を過ぎたところで湯を沸かしてカップラーメンを作る。

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富士の折立方面からワンサカ行列をなして来る。それを見ながらラーメンをすする。

 

休憩後、歩き出して間もなく後ろから声をかけられた。寒気と頭痛がするという若者男子が室堂に降りるなら連れて行って欲しいというものだった。

雄山に行くので断ったが、ザックのポットに沸かしたての湯があったのでまず飲ませた。汗で濡れた彼のシャツは下界で着るものだった。それでは体が冷え寒かろうにだった。着替えは上着のフリースしかないという。とにかく全部脱いで乾いたフリースに変えるように奨めた。ジーンズこそはいていなかったがハイキング感覚で来ている。装備ひとつで生死を分けるといっても過言でない。雨具や山用の服が揃っていたら、こんなことにはならなかったのにと思った。室堂(雷鳥沢テント場)に降りる人がいたのでその人にお願いした。

 

 

1:00 富士の折立に向けて出発 コースタイムは35分。

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15分ばかり降ると鞍部。左手は内蔵助カール。よく見ると内蔵助山荘から登山道があり、この雪渓を渡ってからも黒部川に向って道がついている。登山者は見えなかったが機会があれば行ってみたいと思うルートを見つけた。内蔵助山荘にも泊まってみたいし。

 

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内蔵助カールがある鞍部から富士ノ折立を上がる。

これが結構きつい。雄山方面から降ってくる『登り優先』を知らない登山者にペースを乱されぎみになる。

「お先にどうぞ」と道を譲られれば「ありがとう」とシンドさに堪え、先に登らせてもらいながら標高を稼いでいく。
一方、夫は急登に耐えかね、どうぞどうぞと下山者に道を譲ってばかりでちっとも上がってこない。足場が悪い道で待っているのは危ないので夫を置いて私は先に進んだ。

 

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1:35富士ノ折立(2999)着。これでようやく立山三山に入りほっとする。

夫を探すとまだ下の方で、続々降りてくる下山者の通過を待っている。いくら疲れていても、それでは何時までたっても登れない。ユックリでいいから、なるべく足を止めないように登らせてもらわないと。夫はペースがつかめずとてもつらそうだった。

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富士ノ折立からの景色。

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最後の急登を何とかクリアして夫も富士ノ折立に到着した。
ここまで来れば、あとは多少のアップダウンはあるものの大したことない。昨日のような雨がザ~ザ~降っても、15分ぐらいの所に大汝休憩所があるので大丈夫。

 

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大汝休憩所でコーヒータイムした。今日は子どもを背負うお父さんを何度か見かけたが、大汝ではお母さんも背負う4人家族を見た。(15キロはあるはず)トレーニングなんだろうか?
大汝休憩所の後ろが大汝山(おおなんじ)3015m。

 

Cimg1838 大汝山というプレート越に室堂がかすかに見える。以前来たときは、剱岳の眺望がよかったけれど今日は真っ白で何も見えない。

 

さて最終目的の山、雄山(おやま)2991mに向かう。

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雄山神社がすぐそこになってきた。この頃からガスが切れ時々青空が見えるようになる。

 

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3:25雄山に無事到着。夫の還暦のご祈祷をしてもらう。そう今回は還暦記念登山なのだ。大義名分を作って夫を引っ張りだしたのだ。

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標高3003mにある雄山神社は日本三霊山(富士山・白山・雄山)のひとつである。この時はまわりは真っ白だった。

 

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こんなところに社があるのです。

 

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鳥居の脇に咲いていたイワギキョウ。

 

社務所前で休憩していると・・・・・ 

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ブロッケン現象が現れた。山をやり始めて10数年、初めてのブロッケンだった。自分の影が虹の輪のなかに浮かぶ。不思議な現象ではしゃいだ。還暦記念登山の雄山でブロッケン現象を体験できたことは何か意味があるような気がした。

ブロッケン現象
太陽などの光が背後からさしこみ、影の側にある雲粒や霧粒によって光が散乱 され、見る人の影の周りに、虹 と似た光の輪となって現れる大気光学現象 

 

4:00 一ノ越に向けて下山する。

Cimg1869 最後のこの降りは覚悟していたが、朝から9時間強歩いた足でこの急坂を標高300m下降するのは実に大変だった。ここまで無事に来て転倒するわけにはいかない。最後まで気を緩めず歩いた。それにしてもきつかった。

 

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4:35 一足先に私が一ノ越山荘に到着。

 

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10分遅れで夫も無事下山。朝から10時間。計画より1時間オーバーだった。
体力低下著しい夫のために、これからは少し軽めのコース設定にしようと思う。

 

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夕飯はシチュー。山小屋でシチューは初めてだったが疲れた体にはよかった。

 

小屋のストーブに火がはいっていた。小屋番曰く「明朝はもっと冷える」

部屋は夫とふたりきりなので寒い。8時に布団に入ったが寒くてなかなか寝付かれなかった。夜中も [E:typhoon]風の音で何度か目が覚めた。一の越の夜は寒かった。

 

出発地  :雷鳥荘       2372m     6:45発
到着地  :一ノ越山荘      2705m     4:35着 
 
標高差  :  A   995m    3時間37分      
        D   603m     1時間38分              
行動時間:                       9時間50分

ピーク      3015m(大汝山)    

                               つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

2012立山②

平成24年9月16日(日)[E:sun]

夜中に目が覚めることなく5:30起床。6時の朝食に並びに行くと、あれまぁ~行列がない。部屋に戻るのも面倒なので先頭で待機していると、あっという間に列ができた。

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雷鳥荘の朝食はバイキング形式。好きなだけ選んで好きな場所でとる。

 

山小屋は宿泊料先払いと決まっているが、ここ雷鳥荘の宿泊料は後払い。因みに温泉なので宿泊料(8800円/人)以外に入湯税150円が必要。


 
 

Cimg1793 支度を済ませ外に出る。スタートラインに立ち今日の行程を一望する。
どうだ、今日はいいぞ、と山が
私を誘う。妄想の世界に没入するには絶好のシチュエーションだった。

 

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まずはここ雷鳥荘(標高2372m)から足元に見えるテント場(2260m)まで100mほど降る。そしての劔御前小屋(2760m)まで500m上がる。
雷鳥坂に陽が当たる前に少しでも標高を稼ぎたい。 までのコースタイムは2時間20分なので休憩含めて3時間あれば行けるだろう。

 

6:45雷鳥荘出発。

Cimg17977:00テント場着。私は一度もここにテントを張ったことがないので、テント泊の人たちを羨ましく眺める。
アザミ越しに白く見える山は立山三山。右端の雄山に着くのは8時間後かな?

 

 

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左)テント場から称名川を渡り、山に入っていく。
右)いきなり道を間違えていることに気づく。地図で確認すると陽があたってる目の前の尾根の向こうが登山道のようだ。

 

Cimg1799 戻るのも面倒だ。一面のチングルマをなるべく踏んづけないように、ゴメンよゴメンよと言いながら進路を変える。

 

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軌道修正成功。登山道に入り一服する。ナナカマドの紅葉はまだ早い。

 

Cimg18017img_4241南を振り返れば、今朝出発した雷鳥荘・地獄谷・テント場・称名川が箱庭のように見える。

 

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その先には
、歩けば3日かかる薬師岳も見える。

 

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西はるか遠くに赤い屋根の大日小屋を発見(望遠撮影)。あそこまでなら今日中に行ける。そんなことを考えながら剱岳見たさにせっせと雷鳥坂を登る。

 

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9:27 劔御前小屋に着。10年前ここを通過したとき、泊ってもいないのに入口で記念写真を撮った。あの頃は自分を入れて記念写真をよく撮ったものだ。今では自分を入れて撮ることはほとんどしなくなった。

 

Cimg18093img_4244幸運にも剱岳はくっきりと見えた。これが見たくてここまで来たのだからせっせと登った甲斐があったと喜ぶ。
2002年8月にこの剱沢を降りて剱岳に登ったとき、ここには雪渓はなかった覚えだ。
これだけ雪渓が大きく残っているということは、本当に今年は梅雨時の雨量が少なかったということがわかる。当然黒部川の水量も少ないはずだ。
しかし今年は解けることがないとなると、あの下の高山植物はどうなるのだろう。自然界って本当に興味深い。

 

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劔岳から右奥に目をやると白馬三山が見えた。縦走したときのことを鮮明に思い出す。その時の記録をちょっと載せます。

 

 
…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。

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2002年8月テント縦走 猿倉⇒大雪渓⇒白馬岳でテント泊⇒杓子岳

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鑓ケ岳では暴風雨⇒その後の鑓温泉でテント泊。 

              …。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。 

 

上記のような楽しかった思い出と、同行したE氏が現在癌闘病中だという現実が入れ替わり頭に浮かぶ。別山乗越から遠望した白馬三山は私をいたたまれない気持ちにした。 

 

 

9:45 気をとり直して別山に向けて歩き出す。 

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左)別山から雄山への縦走路を見て、とにかく嬉しくて仕方がなくなった。あそこまで歩いていくのだという強い意志は人を幸せにするものだと思った。

                                   つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2012立山

平成24年9月15日(土)
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久しぶりに北アルプス北部の立山へ。今回の相棒は夫です。

 

07:10発 名古屋駅から今回はバス[E:bus]で。(10:53富山駅着)
11:25発 富山駅から電車[E:train]で立山駅へ。(12:25立山駅着)
12:30発 立山駅からケーブルカー[E:subway]で美女平へ (12:37美女平着)
12:45発 美女平からバス[E:bus]で室堂へ。(13:35室堂着)

 
 

こんな具合に、何度も交通機関を乗換えなければ行けない。立山信仰が盛んだったその昔はケーブルもバスもなかった。自力で上がった大変さに比べれば今はずいぶん便利になったけれど、乗換がなぁ~とぼやきたくなるほど、今でも室堂までは遠い。

 

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立山の地図⇒国土地理院はここをクリック

 

 

        ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 

 

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富山駅に着いたら、まず室堂までの通し切符を購入。富山駅はリニューアル工事をしていた。

 

Cimg1760 富山駅で仕入れた昼食を手にぶら下げ富山地方鉄道に乗る。

 

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立山駅までの1時間の間に昼食を済ます。いつもの富山名物鱒寿司。私は鱒と鯛、夫は鱒と鯖のセット。鯛と鯖を交換したら鯛の勝ちだった。そりゃそうでしょう。値段も少し高かったし。なのに「オレは鯖が食べたかった」と。「ふぅ~ん」と意味深な夫婦の会話が富山平野を流れていく。

 

Cimg1765 稲穂が頭を垂れ一面黄金色。この連休には家族総出で稲刈りするんだろうな。日本の原風景を眺めながら駅弁完食。満足。

 
 

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岩峅寺イワクラジ駅。映画にもなった新田次郎著『剱岳 点の記』によく出てくる地名。この駅に限らないけれど、富山電鉄はどれも古い駅舎ばかり。

 

 

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この川の源流は多分、称名川だと思う。そうならば、明日この源流を渡って雷鳥坂を上がることになる。今まで何回となくこの電車に乗ったが、この称名川を渡ることに初めて気付いた。何回も通うとだんだん視野が広がってくる。大したことでなくても発見したと大袈裟に喜ぶのが私の癖。知るは楽しい。

 

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富山電鉄は立山駅に着き、今度はケーブルカーに乗り換える。

 
立山駅と美女平駅間1.3km、標高差およそ500mを7分かけて一気にのぼり、低山帯の森林から山地帯の森林への変化がダイナミックに車窓に展開します。
平均勾配24度の坂をツルベ方式で2台の車輌が昇降し、途中に2ヶ所のトンネルと材木石の露頭しているところを見ることができます。
運行開始:昭和29年

 

客車の下に連結している貨車で黒部ダムの資材を運んだとアナウンスが流れる。
そうだったんだぁ。2002年剱岳のとき、ザックをその貨車に乗せた。あの頃は立山が初めてでワクワクしてた。あれからもう10年経ったが山に入るワクワクは今も同じだ。

 

 

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美女平でケーブルからバスに乗り換える。車窓から称名滝がチラット見える場所に来るとバスは一時停止しアナウンスが流れる。2009年に大日岳縦走で称名滝に降りたことを思い出す。

 

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バスはジグザグと高度を上げていく。車窓から富山湾が見える。日本地図を頭に思い描く。

 
 

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朝7:10に名古屋を発ち、6時間半かかってようやく室堂に着いた。
明日予定している縦走路の別山~真砂岳に熊の目撃情報ありと注意喚起をしている。だからといって行程は変えない。

気温は13℃、晴天とある。今日は雷鳥荘までの1時間弱歩くだけだからのんびり行こうとこのときはお気楽に考えていた。

 

Cimg1779 室堂に降り立つと、幕を降ろしたかのように真っ白だった。やはりがっかり。明日が天気なら今日はどんな天気でもいい、なんて思いながら『玉殿の湧水』で明日の行動水をカラ容器に詰めていたら、ポツリポツリと雨が。間髪入れずザーと降りだした。雨具の上をつける。じきに風も出てきて横なぐりの降りになる。下をはくのは面倒くさいので傘をさして今宿に向かう。

 

 

途中にある『みくりが池温泉』は、雨装備を整えるものであふれていた。我々は今宿に駆け込んで温泉に入るからいいけれど、室堂からバスに乗って帰る人は整えるしかない。

 
 

Cimg1781 面倒臭がって雨具のズボンを履かなかったから、当然下半身はビタビタ。でもさすが山ズボン。機能性(防水)がすぐれており、足に張り付かず冷えない。カッパも傘もないジーンズに綿のTシャツ風の観光客はずぶ濡れでひどい状態だった。洗礼を受けた人たちをたくさん見た。しかし稜線でコレだったら間違いなく低体温症になるだろうと思われる。

 

 

Cimg1782  14:29 『雷鳥荘』着 

 

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乾燥室に直行し雨具等を脱ぐ。この日の乾燥室は満艦飾だった。

 
 

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部屋に入ると先客一組(夫婦)。宜しくと挨拶する。一息つき外を眺めると雨は上がっていた。先ほど雨に打たれて歩いた道を恨めしく眺める。それにしてもいい景色だ。

 
 

温泉に入りさっぱりする。石鹸もシャンプーもOK。明日からの登山に備える。

 

Cimg1786 稜線の山小屋よりはメニューが豊富。富山名産の白えびもあった。美味しく完食。

 

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富山市街方面に沈む夕日。明日の天気を期待しながら、夫婦4組8人の部屋で休んだ。

                                           つづく

 
 

 

 

予告

9/15(土)越中~信濃へと乗越山行しました。

ぼちぼち記録します。今しばらくお待ちください。

 

Cimg1824                         別山北峰(標高2880)にて

     山行記はこちらから⇒ ここをクリック

2012西鎌尾根④最終回

夜中、雷が[E:thunder]ゴロゴロ・・・ピッカー、窓ガラスをたたく雨音で目が覚めた。目を閉じていても雷の光はわかる。布団にもぐってまた寝る。

 

4時半頃起床。朝食後、まだ雨がしとしと残っていたが空は明るかった。

 

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部屋から外を見る。特徴がある北穂ドームや蒲田富士が目に止まる。

Cimg1546蒲田富士(右側の緑の山)を上がれば涸沢岳。その左横のカニのハサミみたいなのは涸沢槍だと小屋番は教えてくれた。あの稜線を歩いたのは今日のようなしとしと雨だった。

 

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自称健脚マダムも新穂に降りると言っていたので、マダムを撒いて我々は逃げるようにして槍平小屋を発った。7:00 幸いにして雨が上がる。

 

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新穂高までは下りのみ。雨で濡れているので慎重に降った。

 

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                     ヨツバヒヨドリ

 

Cimg1555 7:35藤木レリーフ  このあたりでまた雨が降り出す。私は傘をさして歩いた。(実は行きのバスで雨具の上着を置いてきてしまった・・・)

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滝谷出合で小休止。ツレは雨具をつけた。 

 

Cimg1557 シシウドは下から眺めるのが私は好き。花火のようでキレイ。雨は降ったり止んだり。

 

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ホトトギスが盛んに咲く登山道を降る降る降る。

 

Cimg1560 雨をたっぷり含んだ森の中をひたすら降った。

 

 

Cimg15639:00 白出沢通過。あの先に見える特徴のある山は・・・

 

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ジャンダルムか? 惚れぼれと眺める。

 

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西側には笠ヶ岳。ここまで降りてきたらすっかり晴れていた。

 

 

 

 

 

 

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奥穂高岳への一番近道の白出沢登山口からは林道歩きとなる。

  

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林道脇に咲くソバナ。雨に打たれうなだれている。

  

Cimg1578                     シモツケソウ

 

携帯電話の圏内に入ると受信音が鳴る。世俗に降りてきたことを思い知らされ、あ~あとタメ息をつく。

 

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9:45穂高平小屋着。雨具のズボンを脱ぎさっぱりする。コーヒーを注文。

屋根越しに見えるは↑涸沢岳(中央奥)で手前の三角錐の山は蒲田富士か?

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ズームをきかせると穂高岳山荘も白出沢もよくわかる。

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小屋番がジャンダルムだと教えてくれた。白出沢からみたのはやっぱりジャンだった。
去年、ジャンに行っといてよかったと思った。

 

 
 

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穂高平小屋から林道を通らず登山道を行くと、また山野草が楽しめた。この白い花は何だろう?特徴ある葉っぱだが名前がわからない。

 

 

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これはヤマシャクヤクだがまだ蕾。見渡せばあたり一面、ヤマシャク群生地だった。これはすごかった。満開になったら素晴らしいだろうなと想像するだけでワクワクした。いつの日かこれを目当てに来てみよう。

 

  

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10:50新穂高に着。中崎山荘の日帰り温泉で汗を流す。小屋でもらった割引券で100円引いてもらって700円也。

 

 

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湯上り後、蒲田川沿いのテラスで涼む。景色に同化してしまっている抹茶ソフト。

 

11:55の高山行きのバスの乗る。バスが動き出そうとしたその時、車窓にあの美人マダムの姿を見つけた。どうも今降りてきたようで、誰か話し相手を物色しているのかキョロキョロしている。見納めマダムだった。

 

バスでは槍平でテント泊した男性と一緒だった。話を聞くとAM2時ころから雷と豪雨で散々な目にあったと。山中5泊目にして大雨だったと嘆いていた。

 

  

 

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13:34 バスは高山朝市の宮川を通過。

 

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高山に出たなら、飛騨牛でも食べたい所だが、肉類全般ダメな山友に付き合って麺類を。
せめてもご当地のものをと注文した飛騨ラーメンは特に珍しいものではなかった。

 
 

乗るはずの電車の時間に駅に戻ったら、高山駅はパニックになっていた。山から降りてきたばかりなので世の中の出来事はまったくわからないのだが、どうも全国的に豪雨にみまわれ、富山からの列車がいつ着くかわからないとのこと。乗客はそれぞれ勝手な質問を駅員に投げつけている。対応する駅員は2名。それを見ていてなぜか駅員を気の毒に思った。駅員に怒りをぶつけたってしかたがないじゃないか・・・なんて山から降りてきたばかりの私はそう思った。

 

JR待ち時間は長かったが、無事に帰宅できたことは何よりだった。おしまい。

 
 

 
 

2012西鎌尾根③

ブログサボってました[E:coldsweats01]  西鎌尾根の続きを綴りましたので興味のある方は御覧ください。

<前回までのあらすじ>
8月4日(土)早朝、夜行バスにて新穂高に降り立つ。左俣林道から小池新道を上がり鏡平小屋で休憩。その後、足がつるアクシデントがあったが、無事双六小屋に到着。

もっと詳しく読みたい方は→ ここをクリック

 

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8月5日(日)[E:sun]

Cimg14614:30の朝食後、身支度を整え5:10双六小屋(標高2550m)を発つ。

 

Cimg1463今日は念願の西鎌尾根を槍に向って歩く。まずは↑樅沢岳(モミサワダケ標高2755m)にアタック。樅沢岳に上がるのは昨年に続き2回目。のんびり歩き出す。

 

 

Cimg146515分ほど登った所から振り返って眼下の双六小屋を眺める。樅沢岳の影になって暗いが、小屋・テント場・双六池は箱庭のよう。対峙する山は双六岳。双六のピークはまだここからは見えない。

 

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進行方向の右手側(南)には焼岳と乗鞍岳。その奥に御嶽山も望めた。いずれも百名山。
手前(日付・時間表示の上)に赤い屋根の鏡平小屋が見える。  Cimg1473
乗鞍岳をアップで撮影すると奥に御嶽山があることがよく分かる。

 

 

Cimg1472樅沢岳から笠ヶ岳を見る。縦走路が手に取るように見え、何度見ても見飽きない景色だった。 

 

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左)イブキジャコウソウ  樅沢岳を過ぎると稜線に張り付くようにたくさん咲いていた。
右)ウスユキソウ(エーデルワイスと総称されるウスユキソウ属)
   
白い花びらのような部分は苞で、白い毛が密生してふかふかした感じ。

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左)イワオウギ(マメ科) 白馬岳で見たぐらいワッサワッサと咲く。西鎌尾根アナドルナカレ。
右)キンバイorキンポウゲ。太陽がさんさんと降りそそぐ。この景色のなかに居られるなら日焼けなんてナンノソノ。

 

Cimg1483行く手に登山者2名が歩いている。その先は墨絵のような山並み。こんな景色が私は大好き。思う存分この景色を眺めた。 個人山行ならではの至福のときである。

 

Cimg1492ハクサンイチゲと遠望の槍ヶ岳

Photo西鎌尾根を楽しんでいる私↑ イエ~イ!

 

Cimg1493槍ヶ岳が天をつくようにそびえている。この道はアソコに続く。

 

Cimg1497雪渓で遊んでいたイワヒバリが私の傍らにやってきて鳥語で何やら話してくれる。「よく来たね」と挨拶に来てくれたのだろうと勝手に解釈する。私はそんなふうにしてどんどん北アルプスに陶酔していった。

 

Cimg1501稜線に咲くウサギギク。太陽に向って精一杯の笑顔を振りまいている。まるで花壇のひまわりのよう。西鎌尾根と思えない整然とした咲き方がおかしかった。

Cimg1508一方、日当たりが悪い湿地で太陽に背を向け咲くクロユリ。西鎌尾根にもクロユリの群生地があることに驚く。来てみて初めてわかる。

Cimg1517チシマギキョウ。私はこの花のうぶ毛が大好き。
今年は雪解けが遅いので、想像以上にたくさんの花が見られた。
 

 

Cimg1518歩き始めて約2時間、来た道を振り返る。アップダウンをいくつもこなしてここまでやってきた。この先もアップダウンの繰り返し。人生といっしょ。

 

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左)シコタンソウ(ユキノシタ科) 白い五弁花の内側には黄と赤の斑点。花径は約1cmほどでとても小さい。画像をクリックして最大にして見てみるととてもキレイですよ。

右)カワラナデシコ

Cimg1525カワラナデシコが咲き乱れる登山道を降りてきた。こういう花道は嬉しい。

 

この先で何度目かの小休止する。

 

 

 

Cimg1527だんだん槍・穂高稜線・ジャンダルム・西穂が近づく。ブラボーと拍手喝采。
北アルプスの代表たる穂高稜線は本当に惚れ惚れする。

 

Cimg1528一見、怖そうな鎖場があった。我々は登るのだが、これを降るのは怖いなと思った。後続の若者に先に行ってもらいその後に続く。若者がいてくれたことは心強かった。 

しばらく若者たちと掛連れる。 

 

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10:28 千丈乗越に着。
双六小屋からの4時間15分(休憩含む)は想像以上に楽しかった。天気に恵まれ、ふたつとない山行だった。

 

 

Cimg1532千丈乗越で小休止。飛騨沢を飛ぶヘリコプターを眺めながら甘いものを口に入れる。

 

へそ曲がりの我々は、この先、槍に突き上げず、進路を南にとり奥丸山に向って中崎尾根へと降る。

因みにここから槍まで2時間の直登。皮肉にも雲が目標の槍の姿を隠してしまったので辛い登りになるだろう。掛け連れた若者は槍に向かう。こちらを振り向いたので「アリガト~、キヲツケテネ~」とエールを込めて手を振った。

 

千丈乗越からの急降下は相当ないやらしいものだった。このマイナーなルートが初めての山友はへっぴり腰。来たいと言ったのは誰?と毒づきながら降る。

 

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左)中崎尾根に乗るとニッコウキスゲが思いのほかたくさん咲いていた。
右)カラマツソウ

 

Cimg153712:30 千丈乗越から奥丸山分岐まで2時間とかからなかった。ちょっと飛ばしすぎた感あり。
ここにザックを置いて空身で奥丸山をピストン。往復35分。

 

奥丸山頂上からの展望はガスで360度ナシ。3回目登頂の私は写真を撮る気にもならない。初登頂の山友の証拠写真を撮って下山。

 

ザックを置いた分岐に戻ったら、山友が腕時計をなくしたというので、探しにもう一度奥丸山に登り返す。35分ロスしたが結局見つからなかった。これで私は4回も奥丸山に登頂したことになった。縁がある山のようだ。

 

 

Cimg1542ナンダカンダ言いながら、3:30槍平小屋のテント場に無事降りた。
以前テント張ったところは、どのあたりだっただろうか。ここには思い出が残っている。

 

 

槍平小屋は60歳以上は500円引きだそうで、山友は500円引いてもらっていた。
くっそー!私は8800円。

Cimg1543 夕飯はチキンだった。肉類全般ダメな山友はメインディッシュまるっと食べられない。500円引きはコレだなと私は意地悪くほくそ笑む。

 

明日は月曜日なので小屋は空いていた。6畳の個室を与えられたので山友と2人きりかと思ったら、5時ころ槍ヶ岳から一人で降りてきたという神戸の美人マダム(500円割引)が到着した。

このマダム問題ありだった。話しだしたら止まらないのだ。マシンガントークで山のこと旅行のこと、はたまた自分の人生を延々と話しだす。いい加減飽きてきたのでトイレに立つふりして逃げようと思ったその時、四国お遍路もしたというので食いついてしまった。しかし、ほとんどお接待の車で回ったと言う話は、私にはあまり面白いものではなかった。

 

8:00消灯になり、ようやくマダムから開放されヤレヤレ~と寝転がる。すると間髪を入れずマダムの鼻息荒い寝息が。そして[E:sleepy] [E:sleepy] が始まった。早っ!

イビキもマシンガンだったら部屋を出るぞ!と考えているうちに私も眠った。コノヤロウ!ウルサ~イ!コンチクショー!と私は寝言で毒舌を吐いていたかもしれない。

 

                                                                                つづく

 

2012西鎌尾根②

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カキ氷を2杯食べ、ホットコーヒーをポットにテイクアウトして鏡平小屋を後にした。12:52 

 

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あと1時間で稜線に乗っかるな・・・と見上げたその時、太もも内側に劇痛が走った。あっ!と思うな否や、惰性で踏み出したもう片方の足にも連鎖的に劇痛が走る。もう立っていることも座ることもできない硬直状態。痛みに操られピノキオのようだった。その痛いこと痛いこと、うろたえた。

先に樹林帯に入った山友に、大声で緊急事態を知らせるが返答がない。樹林帯は見通しも声の通りも悪く焦った。何度目かの時に山友の声がこだまのように帰ってきた。平常でないことが伝わってホッとする。

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今日何度か会った小学3年生の孫を連れたテント泊装備の男性が幸いにもやってきた。SOSを求める。すると、この症状は足の筋肉が痙攣(つる)したのだと教えてくれた。水分や塩分不足、疲労蓄積や運動不足で起こるそうだ。情けないことにすべて当てはまっていた。

差し出された残り少ない貴重な塗り薬をチューブから遠慮がちに少しもらって、私は恥も外聞もなくズボンのチャックを下げ、薬をつけた手を股につっこみ、指示通り太もも前の内側から膝に向けてよく擦り込んだ。もちろん男性に背を向けての行為だったが、気づいたら小学3年生のボクからは丸見えの立ち位地だった。おじいちゃんの指示でオバサン何やってるの?という顔でボクは私を見ていた。エライトコロを見せてしまったと反省。とりあえずゴメンねと詫びた。

痛みの峠は越えたので、丁寧にお礼を言い、コワゴワ、ソロソロと歩き出す。ほどなくして待ってくれていた山友に追いつき、孫を連れた男性に助けてもらったことを説明した。

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樹林帯を抜けると、まわりの景色を楽しむまでに回復。応急処置の塗り薬を提供してくれた男性のお陰だった。あれから孫を連れたその男性に会うことはなかった。初登山のボクは見るからにバテバテだったが、テント装備のおじいちゃんはニワカヤマヤでないとお見受けしたので大丈夫だと思った。

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2:12 弓折乗越着。

ここから見る穂高稜線の岐阜県側は危険地帯で、滑落でたくさんの生命を飲み込んでいる。遺体が上がっていないのも多いと聞く。景色を眺めながら、今回足がつった場所が安全なところで良かったと思った。危険な場所だったら、足に力が入らなくて滑落も考えられたと思う。無謀な中高年登山者と言われないようにしないといけない。北アルプスを姥捨て山と揶揄させてはいけない。山をやる以上、自己管理を疎かにしていけないと肝に命じた。貴重な体験だった。

           参考:2010年10月の様子

 

 

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2:34 雪見平には雪が沢山残っていた。アレは山容からして鷲羽岳か?そうなら私の頭の中の位地関係というか感覚がずいぶんずれていたことになる。訪れるたび山は新しい発見がある。発見は本当に楽しい。スイッチが入ってしまった私は、気がつけば先程の足の痛みを忘れてハイテンションだった。ガシガシ歩けることが楽しくて仕方がなかった。

 

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くろゆり平を超え、双六小屋のある谷に降ってきた。

Cimg1455テント場の脇にはクロユリの群生が

         Cimg1456 ハクサンイチゲや

Cimg1459 イワツメクサが出迎えてくれ、程よい疲れの心身は完全ノックアウト。北アルプスに酔っていた。アル中毒患者そのものだった。

 

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黒部五郎から縦走したときと同じ部屋を与えられた。

この先の山行に役立つ貴重な体験をした日だった。

                                     つづき