平成22年1月23日(土)[E:sun]/[E:cloud]
中学の頃からの親友たちと箱根を旅した。箱根のどんな山?金時山かな?とお思いの方、ごめんなさい。今回は山旅でなく観光です。山以外に興味のない方は読み飛ばしてください。
親友たちが言うには、我々の修学旅行(中学3年)は箱根だったと。なのに私は、えっ?箱根だったの?と。楽しいはずのその記憶が私にだけほとんどないことがわかりショックだった。(覚えていなかったことは恥ずかしくもありそのショックも含む)
我々はおばさんに(ひとりは去年孫が生まれ、おばあさんに)なったが、当時乙女だった三人がそろって箱根再訪するなんて何とも幸せなことよ。でも100歳くらいまで長生きしたらこの再訪も忘れるんだろうな。修学旅行のことのように。
さて、旅を進めましょう。
「小田原駅」で新幹線下車。
右往左往しながら買い求めた箱根フリーパス(2日間有効3900円)をにぎりしめ(2日間なくさないように)、終点「強羅」行きの[E:train]登山電車に乗り込む。
登山電車は何度かスイッチバックしながら箱根の山に分け入っていく。↑
車窓からちらっと箱根街道が見えた。箱根駅伝のコースだ。心臓破りの坂、まさしく天下の嶮だった。(登山電車:小田原駅→強羅駅まで1時間強)
「強羅駅標高578」でケーブルカー↑に乗り換え、「早雲山駅標高757」に向かう。(所要時間10分ほど)
このケーブルカーは、ワイヤーロープの両端に車両が取り付けてあり、一方が降るともう一方が上がるという仕組みになっているそうだ。うまく考えたものだ。
私は一番前に陣取りあちこち眺めた。ちなみにあとのふたりは空席を見つけ腰掛けていた。
「早雲山駅」から本日4つ目の乗り物ロープウェイに乗って、「大涌谷駅標高1044」へ。すぐに箱根山の外輪山↑が北側に見えてきた。あの1番高い尖った山が金太郎伝説の金時山(標高1212)だとすぐわかった。2度もチャンスを逃して登り損ねている山だけに「イツカキット」と見入る。
[E:note]まさかりかついで きんたろう
くまにまたがり おうまのけいこ
はいしどうどう はいどうどう
はいしどうどう はいどうどう
終点「大涌谷」↑に近づくと、いたるところからガスが噴出していた。まずこの痛々しい山肌に驚いた。無知な私は山を削っているのかと思った。説明版を読んでわかったことだが(下の写真参照)、噴気活動が活発なこの谷は地質がもろく、何度も地すべりを起こしているそうな。この大規模な工事は地すべり対策工事だったのだ。豪雨にこの対策はどれだけ堪えられるのだろう。自然の力は、ときに想像以上なことが多いだけに、神奈川県の苦労は絶えないだろう。
大涌谷名物 「黒たまご」↑。特有の酸性熱泥でゆでると真っ黒になるらしい。ひとつ食べると7年延命と紙袋に書かれている。寝たきりで長生きしても困るのだが・・・なんて思いながらアツアツをほおばった。
私は友達を置いて大涌谷源泉まで行ってみた。
その道はだんだん登山道となり、靴をドロンコにして歩くことになった。
大涌谷から神山~駒ケ岳へも道がついていた。観光地なのに登山客がやたら多いのは、これが目当てだとあとになってわかった次第。
大涌谷源泉からの帰り道も富士山は結局姿を現わしてくれなかった。
残念な気持ちでロープウェイに乗り、芦ノ湖に降りていく。
「桃源台」(標高700)からバスに乗って「仙石原」(標高650m前後の高原)に出る。
バス車窓からススキ草原を見た。時期は過ぎているが、一面萌黄色のその草原は何とも美しかった。
仙石原は、今では山に囲まれる高原だが、何万年前の一時期は湖だったそうだ。時はさかのぼり数万年前のこと、箱根火山のカルデラ内で地下活動が起きたとき、その火砕流が早川をせき止めて仙石湖(カルデラ湖)を造った。
しかし、その後の火山活動で大量の岩屑が仙石原湖を埋め尽くす。湖は消え高原になったということだ。なかなか興味深い。詳しくはこちらをご覧ください。 もっと詳しくはこちら
ラリック美術館のレストランでランチ後、星の王子さまミュージアムへ。
サン=テグジュペリ生誕100年を祝し、日本を代表する観光地の一つとして世界的に知られている箱根の地を選んだそうな。
大人の童話といわれるのこの本は奥が深く、読むたびに新たな発見がある。その館内はキツネ、ヘビ、バラ、ウワバミなどが紹介され、あの有名な台詞「大切なものは目に見えないんだよ」というコーナーでは足が止まった。サン=テグジュペリのマジックにすっかりかかった私はいつもの癖で、自分勝手にあれこれ妄想する。星の王子さまのように私の物語にもたくさんの重要人物がいることに気づかせてくれたミュージアムだった。
宮ノ下にある富士屋ホテルに立ち寄った。明治24年(1891)に建てられたそうだ。社寺建築を思わせる建物で、特に玄関は風格がある。↑ここから入って社会見学した。ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、チャップリンそしてヘレン・ケラーも訪れたという。
今宿、小涌谷にある「水の音」へ。富士屋ホテルを見学したあとなのでちょっとがっかり・・・は否めない。箱根十七湯のうちの「小涌谷」「宮ノ下」の2種類の源泉がありどちらも楽しんだ。部屋にも露天風呂がついていたが、この時期寒くて入る勇気はない。もったいなかった。おなかいっぱい食べ、温泉に入り、お決まりの台詞「ゴクラク、ゴクラク・・・」が口をついて出る。
おばさんの旅の初日が終わろうとする頃、親友Aが衝撃的なカミングアウトをしだした。私は顔にクリームを塗りながら、Aの横に座った。
聞けば前回旅した天橋立から帰った次の日のことだと言うから3年近くも前のことだ。それからの苦悩の日々をAは語り始めた。Bは少し知っていたようだが、初耳の私の驚きは大きく、話を聞くうちに涙が出た。去年一緒に京都に行ったときの事がよみがえった。そのとき、Aはどれほどの悲しみを抱えていたのだろうと思うと一層かわいそうで仕方がなかった。今では解決したこととして話してくれたのだが、それでも話すには勇気がいっただろう。頑張ったねA。よかったぁといいながらまた涙した。
気づけば、日にちが変わっていた。ふかふかの布団に滑り込む。泣いたので少し目が熱い。が、あぁ~ゴクラク、ゴクラク・・・。