私を今一度せんたくいたし申候  3日目その2

平成27年1月15日(水) 3日目 その2

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今朝、宿を発って約25㎞。念願の『大岐の浜』にようやくたどり着く。
(まだ宿ではないです)

以前撮ったこの浜での写真は気に入って年賀状などでよく使った。四国88ヶ所をめぐる道(1200㎞)のなかで印象に残る場所は?と尋ねられたら、ここ大岐の浜!と即答するくらい好きな場所である。

 

Cimg0157浜に降りると12年前と変わらない景色が出迎えてくれた。この橋を渡って白浜に出る。 

 

Cimg0162サーファー越しに見える足摺岬は、まだ18㎞も先だけどずいぶん近づいたことが見てわかる。

12年前は久百々から足摺岬を往復したのでここは2度通った。しかし今回は足摺岬から西に回りこむ計画なので、お遍路でここに立ち寄る機会は当分というか、もう多分ない。最後と思って大岐の浜を味わって歩く。

 


 

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「GW頃からアカウミガメが産卵に来ちゅうで、亀が怪我しないようにこうやって穴を掘って流木やゴミを燃やしちゅう。だから、毎年カメが浜を綺麗にしてくれてありがと!ありがと!と泣いてワシに礼を言うがや」と青い服を来た男性が話してくれた。ウミガメ産卵の時に流す涙はお礼の涙だったんだ。

ともあれ、ウミガメ保護の活動には頭が下がった。カメだけでなく遍路も気持よく通れることに御礼を述べた。

  

 

Cimg0170ふと波灌頂をしてみることを思いつく。父の戒名(2000年没)を金剛杖で書き、簡単に般若心経とだけ唱えた。波が戒名を消していくことで供養となるらしい。

 

Cimg0176 寄せては返す波打ち際のキラキラ輝く様をじっと見つめる。炭酸の泡のようにシュワシュワ~と弾ける音も心地よい。

 

Cimg0177お遍路を初めてから知った『洗心』という言葉が思い浮かぶ。もっと深い意味があるのだろうけれど、この波打ち際の景色はまさに『心が洗われる』ものだった。(私を今一度せんたくいたし申候のタイトルに内容が近づいてきたかな?)

日常で溜めに溜めた私の『心の汚れ』が、寄せては返す波によって徐々に沖に流されていく。そう『波灌頂』のように。波打ち際のような『均された心』になりたい。

そう思うだろ?波がそう語りかけてくれたような貴重な時間だった。

 



 

Cimg0172落し物を探しているかのような男性が前から歩いてきた。「何かお探しですか」と声をかけると、小瓶から出した桜貝を私の手のひらにそっと乗せてくれた。景色に夢中だった私は、足元の桜貝に気づかなかった。見渡せば無数の桜貝が帯状に延びていた。

何度来ても新しい発見があって、お遍路は本当におもしろい。

 

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さて、2㎞程の浜のどん詰まり。小川を渡渉するところに行き着く。水が多くて直進は無理なので、渡れそうな所まで遡り、金剛杖の助けを借りて対岸にジャ~ンプ!成功!そして滑らないように崖をへつりながら戻り、県道へ上る目印に「コの字」で無事着。以前より難易度は高かった。この大岐の浜が好きなのは、最後にこのスリル満点の渡渉があるからとも言える。

崖道を這い上がり、ひょこっと県道に出る。この遍路道はやっぱりおもしろい。

Cimg0182県道から大岐の浜を振り返り、「無事クリアーできたねぇ~おもしろかったねぇ~」この独り言を犬の散歩をする女性に聞かれ笑われてしまった。

 

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以布利漁港に降りる急坂は足に堪えた。懐かしい遍路道に入り、また山道を通り県道に上がる。

そして12年前には通らなかった気がする遍路道に入る。この山道が長かった。ホウホウノテイで「お遍路さん休憩所てまり」まで下るとやっと車道に出た。道なりに下ると以布利と土佐清水港を結ぶ347号に出る。足摺岬は左折だけれど今宿に向かうため右折した。

347号沿線は人家もなく車も通らない寂しい道だった。微妙な登り道を15分ほど歩くとぽつん建物が見える。宿かと思ったら葬儀屋という看板が見て取れがっかり。葬儀屋迄来たらその裏が民宿紆海だった。気が付かなかったらもっと先まで歩いていたかもしれないと思うとぞっとした。

 
Cimg01845:00頃、民宿紆海に到着。玄関で何度読んでも誰も出てこない。葬儀屋の裏というだけで不気味さが漂う。お化けどころか人間も出てこない。この近辺では宿はないので困った。大声で呼んでやっと上げてもらえた。ヤレヤレというのか何というのか・・・・。

風呂に入るように案内されたので着替えを持って風呂場に行くと湯が張ってない。昨日とその前は、イタレリツクセリの贅沢をしただけに、この天と地ほどの差は堪えた。

 

Cimg0185民宿なのに夕飯は部屋食だという。食堂がないというわけではないのに何故だろう?テレビはコイン式で100円入れたけど映りが悪い。テレビが古いのか地域的に受信しないのかどちらにしても・・・・。

夕飯が運ばれてきた。文句は言いません。完食しました。

翌日の朝食は時間が遅いので、おにぎりを頼んだ。食後に宿の精算を済ませる。朝食用のおにぎり込で6500円也。

 

50代最後の夜、こんな晩でした。こういうのを修行というのでしょうか?

                                      つづく

                  今日の歩いた距離 32㎞。48366歩