私を今一度せんたくいたし申候  初日その2

37番岩本寺を出発。実質ここからがお遍路の始まり。

                                  

1巡目のとき(2003年3月4日)泊まった37番前の宿は看板が下ろされていた。勝手に外からのぞいてみたら当時のまま小奇麗にされている。後継者がいなくてやめる宿が多いと聞いているが、ここもそうなんだろうかと残念に思う。
Dscf0122                12年前は玄関にお雛様が飾ってあった

 

そういえば、昨年は四国八十八ヶ所霊場開創1200年」の年だった。その記念の年にはお遍路できなかったけれど、今年の5月末までは納経すると記念スタンプと特別な見影がいただける。納経帳の重ね印は好まないというより300円を惜しんで2巡目は納経しなかったけれど、今回は記念スタンプ欲しさに納経してみた。

Cimg0552_2 青いスタンプが1200年記念スタンプ。私が生きているうちに1300年記念はないのだからある意味貴重。ひょっとして私の血を受け継いだ玄孫あたりが1300年記念の重ね印するかも。そんな妄想は楽しい。 朱肉の重ね印を含めて貴重な1ページとなった。

Cimg0572 見影は赤と白をいただく。こんなに盛りだくさんなのに納経代300円のまま。

 


 

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気がつけば日は傾き、自分の影と並んで歩く。「37番で宿泊すればいいのに、少しでも距離を稼ぎたいだなんて、ゆっくりできない性分だね」と影に語りかける。「私はどうすることもできません!」と言ってるような・・・・

 

反対側に立つ道路工事の警備員さんと目が会うと「どこまで行きゆう?」と声がかかる。自動車の騒音に紛れながら「さ!が!おん!せん!まで~!」とヤッホーをする時の手で声を張り上げる。聞こえたのかどうかわからないけど笑顔が帰ってきた。
歩きだして間もなく「おへんろさ~ん!もう少しで峠じゃき、あとはずっと下りやき!」と大声が。この背後からの声かけは嬉しいものだった。大きく手を振って別れた。

 

 

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まだかまだか・・見落としたかなと不安になりかけた頃、目的の遍路道入り口に着いた。当時の資材置き場の面影はなくずいぶん変わっていた。先ほど教えてもらった下り坂を行かず、モノ好きにもここから片坂トンネルの上を越える。

 

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今回初めての山越えだった。所要時間30分位で懐かしい看板が出迎えてくれた。このS」の看板は歩き遍路の道しるべとしてなくてはならない。この西尾自動車の敷地を通る形で国道を横切る。

 

国道を行かず一本東側の道を行く。いつもの癖で、今超えてきた山を振り返っていたら金剛杖にしばりつけていた手ぬぐいがないことに気付く。あぁ~!片坂トンネル越えで落としたんだ。残念でしばし立ちすくむ。ふたたび山を見上げ手ぬぐいに別れを告げた。 

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手ぬぐいを見捨てた自責にかられていたら、こんな看板に出会う。だめよ~だめだめ!
「手ぬぐいを落としてダメよ~」 タイミングが良すぎ
バカ受けした。(3日後の宿の女将さんに聞いたんだけど、このどちらかが今治出身だとか。私右側の親父役が好きです) 写真奥が国道。

 

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やめる宿あれば、始める宿がある。この宿を知っていたらきっとここにしただろうと思う。
そんな時、母から電話。心配するから「ちょうど宿に着いたところ」と嘘をつく。その後の2㎞の長かったこと・・・・・・。嘘が応えた。

 

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ほうほうのていで宿に着く。土佐佐賀温泉「こぶしのさと」  遍路宿らしさからかけ離れているけれど、この近辺の宿はここしかない。

 

2階奥の部屋に案内されてから洗濯機をかけ、部屋中散ちらけのまま夕食に。

 

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夕飯は地の物を使ったメニューでご馳走だった。高知のお決まり「かつおのたたき」は地元佐賀産のゆずの果汁酢がかかったカルパッチョでいただく。なんと言っても「仁井田米」は絶品だった。たいていご飯を残す私だけど、かき揚げの塩をかけて完食した。

 

部屋に戻り布団にごろり。たった10㎞歩いただけなのにこの様では、明日からどうしようと不安になる。とにかくお風呂と大浴場へ。とろんとろんの湯でゴクラクゴクラクと手足をのばして浸かった。

 

疲れたと言いながら歩き、据え膳で美味しいものを食べて、いつでも入れる湯に浸かり、好きなときに寝る。それ以外わずらはしいことはまったく無し。日常では感じることができない幸せを久しぶりに感じた。命の洗濯ってこういうことだと今更ながら思う。よってタイトルを「私を今一度せんたくいたし申候」と龍馬の名言を真似てみることにした。      

                                     つづく