平成24年9月17日(月・敬老の日)[E:typhoon]→[E:sun]
風の唸る音で目が覚めた。5:30起床。6:00朝食。
さて、今日は黒部ダムの方へ降りようと思う。小屋番に道の状況を尋ねると、最近親子のクマを見かけるので注意するようにと教えてくれた[E:bearing]
昨日雄山でもらった赤い札の鈴をクマよけにザックにくくりつける。さらに夫は笛を首からぶら下げる。これでも出会ったら、やられるか、戦うか(夫が)、逃げるか・・・・。そういえば昨日のルート上にクマ目撃情報ありだっけれど、そんなこと忘れて歩いてた。
7:40 クマ対策装備で一の越山荘(2705m)を出発。外に出るなり猛烈な風でたじろぐ。ダウンの上に雨具を上下着こんでいても寒い。もちろん手袋2枚。暴風が容赦なく体感温度を下げる。稜線はもっと寒かろうに。
東一ノ越に向けて歩き出すと、3人のパーティーがやってきた。これは幸い(クマよけ)とばかりに先に行ってもらう。
実は夜中から気分が悪かった。食べ過ぎかムカムカと気持ち悪く眠れなかった。室堂に降りてバスに乗って帰るという選択肢もあるけど、念願のルートに背を向けるのはしのびない。谷に入れば風はやむはずだからとちょっと無理して歩き出す。力が出ず先のパーティーにどんどん離された。クマがひょっこり出てくるかも?
小一時間歩いたころ、東一ノ越が見えてくる。静かな登山道は我々だけ。快適。
8:30 東一ノ越(2480m)着。先客が休憩していた。気がつけば気分もすぐれ、私はすっかり元気になっていた。雨具上下・ダウン脱ぐ。
南のほうに見えるのは黒部五郎だろうか・・・イジワルな雲が峰々を覆ってわからなくしてるけれど充分楽しめるものだった。
やっぱりこっちに降りてきてよかった。人ごみに入っていくのは少しでも遅くしたいから。
9:05 黒部湖に向って急な坂を降りる。黒部湖までの標高差972m。黒部湖やロープウェイの大観峰の駅を見ながら降った。
珍しい花ではないがミヤマリンドウが目に止まる。
立山三山を首が痛くなるほど見上げる。アレは雄山だろうか、それとも大汝だろうか。昨日歩いた峰を愛おしく眺める。
登り1名あり。黒部湖から東一ノ越までの標高差を考えると私は登らない。登った先に今のところ魅力あるものがないし。
登山道に咲くリンドウ(左)とトリカブト(右) 秋の花は紫が多いかな?
黒部湖まで下り一辺倒だと思ったら、ハシゴの登りあり。このハシゴは段が歯抜けになっておりすいすいとは登れなかった。この先も少し登って樹林帯に入っていく。
樹林帯に入ると夫はクマよけの笛をよく吹いた。一方私は手拍子付きで
「ある日、森の中、クマさんに出逢った、花咲く森の道 クマさんに出会った[E:note]」
「お嬢さん、お逃げなさい~ラララランランランランラ~[E:note]」と歌う。エンドレスで歌い続ける。
歌も飽きてきた。爽やかな秋空に向って大きく伸びるシシウドに「ココって、いいところだねぇ」と話しかける。
はるか上から見下ろしていたロープウェイを見上げるところまで降りてきた。観光客に「うわぁ~い、こっちも楽しいよぉ~」と大きく手を振る。人工物を間近にしながらコーヒータイム。その間に5~6人降っていった。登山者が少なくって、ここは本当にいいコース。
小一時間ほど樹林帯を歩いて黒部平(1828m)に出た。11:30
ここからロッジくろよんまでさらに歩く予定だったが、文明の利器の誘惑に負け、黒部湖までケーブルで降りることにする。
その前に、予定になかったが黒部平の展望台に上がる。
すると昨日縦走した立山三山と今降りてきた東一ノ越からの景色が「どうだ!」と言わんばかりに立ちはだかっていた。こんな景色を想像していなかったので、このサプライズに、ワンダホ~と大声で叫び(たかった)、喜びのダンスも踊れるくらい興奮した。 なのに夫は冷静。チョットチョット!なんでもっと喜ばないの?と夫にくいつく私。
今度は黒部湖を眺める。「それにしても黒部湖の水、少なくない?」「高い所から見ると少なく見えるのかなぁ」と言いながら降りてきたのだけれど、その通り本当に少なかった。梅雨時の雨量の少なさで雪が解けなかった影響なんだと思う。水位低下ということで遊覧船は運休という張り紙がアチコチに貼られていた。
黒部平から扇沢までの切符2340円を買い、ケーブルカーで黒部ダムに降りた。ちなみ立山駅から扇沢までの通り抜けは8060円。その内の室堂からここ黒部平までの3360円を今回歩いたというわけ。
ダムに着くと、さっきまで冷静だった夫は眼の色を変え、かぶりつくようにダムをのぞく。それに比べ私は夫ほど興奮していなかったような・・・。これが男と女の価値観の違いというものなのか。温度差を感じた。
放水ショーは迫力あったけれど、私は立山三山の景色の方に軍配が上がる。
このとき皮肉にもカメラのバッテリーがなくなり携帯撮影になってしまう。
ここなら10年20年後も生きていたなら来れるから、天気を狙ってまたこの景色を見に来ようと思った。そのときは室堂まで大枚はたいて行ってやろうとも思った。紅葉の時期がいいな。
夫は3回目らしいが、私は2004年に欅平から下ノ廊下を上がってきて以来2回目の来訪。でもそのときは12~3時間かけて雨の中、黒部川を遡ってきたのでクタクタでダムを見学していない。着替えてすぐトロリーバスに乗って帰ってしまった。だから今回は一の越からこっちに降りて見学したかったの。
展望台までの長い長い階段は登山並みの登りだった。展望台というだけあって景色は素晴らしく、このお天気が私を更に山好きにさせたのだった。こっち(一ノ越→ダム)に降りてくるという選択肢は大正解だったと思わずガッツポーズ。ヨッシャー!
立山・黒部はまだまだ開拓の余地があると感じた。下ノ廊下から上がる口を確認してダムを後にした。
出発地 :一ノ越山荘 2705m 7:40発
到着地 :黒部ダム 1508m 1:35まで滞在
標高差 : A 185m 28分
D 1358m 2時間53分
行動時間: 5時間31分
1:35ダムからトロリーバスに乗って扇沢に出て、2:00のバスに乗って信濃大町に着いたのは2:35。
そして信濃大町駅15:22発ワイドビューしなの84号に乗って終点名古屋駅に着いたのは18:34だった。
長い旅だった。いつものことながら欲張った旅だった。そんな私に不機嫌ながらも付き合ってくれた夫はさぞ大変だったと今になって思う。ごめんねとありがとうです。いつまでも旅ができるふたりでいたいと思った。
おしまい