平成22年8月22日(日)[E:sun]
北アルプス乗鞍岳の北西山麓に位置する五色ケ原(岐阜県)に出かけました。(立山の五色が原ではありません)
ここ五色ケ原は、乗鞍岳の火山活動で出来た約3000haもの広大な森林地帯で、中部山岳国立公園南端に当たります。2004年オープン以来、オーバーユースを嫌って、要予約の有料ガイドつきで入山を許可しています。
今回は、上の案内図のシラビソコース(○)を案内してもらいます。標高1400から1600mの谷を8時間ほどかけてのハイキングです。
五色ケ原専用のバスに乗って、出合いの小屋↑まで送ってもらいます。立派な小屋ですが宿泊設備はありません。トイレはウォシュレットでバイオトイレでした。自然を守るには、高額な費用がかかってもこれでなければいけません。屋久島は現在どうなっているのだろうとふと思いました。
何万年前に流れ出た溶岩の上に、今ではたっぷりの土壌が堆積し、コメツガ・サワラ・シラビソの樹林帯になっていました。
↑沢上谷(ソウレタニ)を流れる日雇声(ヒヨゴエ)滝です。
むかしむかし、御料の桧材を伊勢へと川出し作業中のことです。この滝があることに気づかず人夫(日雇ヒヨウ)が8人亡くなったと。それ以後、この滝からは日雇の木遣り声が聞こえる。・・・・とガイドが説明してくれました。
歩き始めて3時間ほどすると、沢上谷(ソウレタニ)を離れ小さい沢沿いを歩きます。目を凝らすとイワナが泳いでいます。標高1600では夏の終わりを告げるサラシナショウマやトリカブトが盛んに咲いていました。
林道に出て、わさび平湿原を抜けると立派な小屋につきました。岩魚見小屋です。宿泊設備はありませんが、これまたトイレはウォシュレットでバイオトイレでした。小屋前に冷たい水が湧いており、ここでお弁当を食べました。
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岩魚見小屋からはしばらく林道を歩き、シラベ沢からまた山に入っていきました。沢の流れと一緒に歩きます。下界の猛暑から逃れてきた私には、一服の清涼剤となる涼しげな景色でした。
左)クロクモソウ シラベ沢沿いにたくさん咲いていました。
右)アキノキリンソウ
シラビソ小屋に着きました。山中だけあって小屋の規模は小さいですが立派です。これまたトイレはウォシュレットのバイオトイレで、入山料が高いわけがわかってきました。
シラベ沢を離れ、赤い実をいっぱいつけたオオカメノキ(ムシカリ)の森を歩いて澄池に向かいます。さぞ水が澄んで綺麗な池なのだろうと思ったら涸れていました。沢が直接流れ込まないので、雪解けと大雨の時期は池になり、その後晴天が続くと涸れるということを繰り返すのだそうです。しかし伏流水の加減で、晴天続きでも水が溜まることがあり、人間ではわからない不思議な池だと教わりました。水が満ちれば沈むのだろうヤナギの大木が風にそよいでいました。
クマの爪あとが残る木があちこちにあり、まさにクマの生息地でした。これっぽちの山で無線?と思いましたが、何度かの無線のやりとりはこれだったようです。ある程度守られているように感じました。
沢が流れ込まないのに雄池↑は満々と水をたたえていました。例年夏前には枯渇するそうですが、今年は7/15の集中豪雨の名残で存在していると説明がありました。集中豪雨で登山道が水に浸かり、急遽新しい道を造ったそうです。しかし、ここまで水が溜まったという印からひと月で今の状態まで減ることには驚きました。枯渇するのも時間の問題だそうですが、にわかに信じられないスケールの大きさに山の不思議を感じました。
池のほとりの黒い石が溶岩だそうです。池の水量が安定しないので苔がつかないのでしょう。雄池のほとりを半周しながら、ふきわたる風を満喫しました。
雄池では涼しかったのに、八汐峠に着くころには汗だくになりました。これを降ったら冷蔵庫に入りますから、というガイドを信じて歩きました。しばらく降ると突然伏流水が現れました。シラベ沢です。これがこの先で、とにかく素晴らしい滝になりますから、というガイドの力説にわくわくしました。
それがこの↑布引滝です。五色ケ原シラベ沢の伏流水が、扇を開いたように流れ落ちていました。その美しさに感動しきりでした。涸れたことがないそうです。上部の3つの池の仕組みを含め、まさに山の神秘でした。
滝壺まで降りました。ときおり風にのった水しぶきを受け、まさに冷蔵庫の中でした。左から流れる滝は沢上谷の桜根滝です。ここで合流し、高山市の宮川、富山の神通川となって日本海に流れ出るようです。
沢上谷に架かる吊橋まで後ろ向きになって梯子を降ります↑。安全のためにガイドが増え、ひとりひとり誘導してくれました。至れり尽くせりで登山経験者でなくても安心です。
吊橋の下は横手滝の水がゴーゴー流れスリル満点でした。横手滝は桜根滝になって布引滝と合流します。すごい水量でした。
布引滝展望台からも滝を眺めましたが、滝壺まで降りた我々は物足りないものでした。しばらく歩くと、今朝歩き始めた出合いの小屋に戻りハイキングが終了しました。
待っていたバスに乗ってすぐ帰るのかと思ったら、冷えたトマトのサービスがありました。入山料を払うだけあって、本当に至れり尽くせりです。
おまけにアサギマダラが我々を喜ばせてくれました。ヨツバヒヨドリの蜜を好むそうで随分サービスしてくれました。
展望はないハイキングでしたが、改めて山の神秘を知る機会となりました。