平成21年8月14日(金)[E:sun]
充分に眠れないまま4:30起床。朝食なしで(ババ平で朝食予定)5:05槍沢ロッジ(H1820)を発つ。
しばらく歩くと槍が頭を出した↑。空が明るい。ヤッホー!
昨日雨にもかかわらず、槍沢ロッジまで来た甲斐があったこと実感する。
樹林帯を抜け、5:45ババ平(H2080)着↑。正面は東鎌尾根。まだ私はここを歩いていない。左は横尾尾根で右は赤沢山。
ババ平は旧槍沢小屋跡で、現在は槍沢ロッジのテント場である。(水場あり)
昨晩の大雨でテント泊はさぞ難儀したはず。そのツワモノたちに心の中で労をねぎらう。
大曲を過ぎると、↑大喰岳(オオバミダケ)と中岳が見えてきた。氷河が作り上げた巨大なU字谷。ようやく北アルプスらしくなってくる。あの稜線までの標高差は約900m。休憩入れて4時間ってところか。まだまだ先は遠い。
深い谷を抜けると陽が照りだす。じわじわと額に汗がにじむ。この雪渓↑は上高地を流れる梓川の水源となっている。
標高2350の分岐から槍沢を振り返る↑。正面は赤沢山(H2670)。その奥右下に見えるのは中山(H2492)。
槍ヶ岳に向かう登山客と別れ天狗原↑に入る。登山客は激減し、静けさが漂う。
ここからは未踏の地↑。しばし地図でルートを確認する。
分岐から雪渓を横切ると槍ヶ岳の全容↑が現れた。ナナカマドが紅葉したら素晴らしい景色になるのでしょうね。
しばらく行くと天狗原と岩に大きく書いてあった↑。ここは何万年前の氷河侵食による大渓谷(カール)だった。
天狗原から槍に向かう登山道を眺める↑。ジグザグジグザグと列をなして標高を稼ぐ登山客にエールを送る。こちらは登山客皆無。のんびり気ままに歩く。
天狗原から雪渓が残る斜面を上がる↑。空に登りつめるようでもあった。
登りつめると、眼下に↑念願の天狗池(H2524)が現れた。同時に前方の常念岳(H2857)が目に入る。憎いシチュエーションに思わず笑みがこぼれた。
池まで降る。そして3人の先客に軽く頭を下げてから、目線を槍の穂先から池にゆっくり落とす。
すると池には槍がちゃんと写っていた。心の中で静かにバンザイと叫んだ。
南岳小屋のブログによると、今年の逆さ槍は、お盆過ぎでないとだめだとか、雪が融けると水面に泡が発生し槍が写らないとも書かれていた。
今回はダメもとで来たのだった。それが幸運にも、昨晩の大雨で雪が融けて槍を写すだけの池が現れ、泡も押し流され水面は綺麗だった。そして何より無風晴天。これ以上のものはあるまいと思った。
池のほとりに座り槍を見上げる。私は見えない力に導かれ今ここにいる・・・そう感じるほど槍は神々しいものだった。大自然に身を委ねるという至福のときを堪能した。
実に静かで神聖な場所だった。ここは大勢で来るところではないと思う。
槍の穂先をヘリコプターが何度も旋回していた。地方紙の取材撮影だと思ったら、帰宅後、中日新聞の一面に下記↓の記事を見つけた。
記事には、14日の午前中と書かれている。私が天狗池から見ていた槍の穂先に違いないと思うとちょっと嬉しくもあったりして。勝手に喜んでいた。
が、ここからがいけなかった。
夫が体調が思わしくなく、ここまでペースダウンぎみだった。頭痛と吐き気がするという。この先の計画は南岳に登って、明日は大キレット通過し北穂~涸沢パノラマ新道~徳沢だった。
とても無理だと判断し下山する事にした。
とはいうものの、南岳へのルート↑をじっと見つめながら残念に思ったのは確かだった。
槍を見ながら分岐まで戻る。カールに咲くクガイソウ↑。
分岐からの下山途中、大喰岳上空に月が見えた↑。今日の稜線からの景色はさぞ素晴らしいのだろうと諦めきれず何度も空を見上げた。
ミヤマカラマツ グンナイフウロウ
ババ平を過ぎた頃、前方に↑蝶ヶ岳が遠望できた。雲がぽっかりと浮かぶ。なおさら下山する自分をみじめに思った。
12:00には槍沢ロッジに戻った。その頃には夫は回復したようで、その先は足取りは軽くなり安心した。だからといってもう一度登り返す気力はなく下山するしかなかった。
雨の中を登った槍沢を眺めながら横尾に降りていった。
徳沢から明神に向かう途中で親子連れが前から歩いてきた。すれ違ってから後姿に「楽しい旅を」と小さく声をかけた。それは私の消化不良の山旅をこの親子に託す気持ちから出た言葉だった。
バスターミナルに着いたのは5時を少し回っていた。
念願の逆さ槍は見られたし、とにかく夫が大事に至らなくて何よりだった。おしまい[E:paper]

























