10月7日(日)
起床5:00。
昨晩、布団の中で1時間ほどおしゃべりをした隣の若い女の子はもう出発して居なかった。
彼女は25歳の超美人で自炊素泊まりの単独山行、いろんな話をしたが西穂から奥穂高岳へ抜けると言った。このルートを女一人で行くなんて聞いて驚いた。
それとなく聞いてみると、初めてでないという。が、それでも滑落事故が多い所なので気をつけてと老婆心ながら言わずにおれなかった。
そんな気になる彼女の寝床がもぬけの空だったので、あれ?夢?と一瞬とまどった。
昨晩は話しながら寝てしまったようなので、奥穂に抜けるというのは夢での話かもしれないのだが、彼女に出逢ったことすら夢だったような気がしてきたのだった。
彼女は名古屋在住で鈴鹿にもよく行くとも言っていた・・・・これも夢での話かもしれないが、いつか鈴鹿で再会できると私は本気で思っている。
5:30朝食。味噌汁とご飯はお変わり自由。隣の山男は超山盛りのご飯を4杯もおかわりしていた。あれだけ食べれば馬力もでるだろうな。
朝のやさしい光が小屋を照らす。
ここから上高地か焼岳、西穂、新穂高へ、皆それぞれの道に分かれていく。
6:15、私は小屋の横から焼岳に向かって降っていった。
ここからは初めての道なので慎重に行く。
雲海に浮かぶ乗鞍岳を見た。あぁ、本当に綺麗。
樹林帯の隙間から見つけたひとこまだった。だから山は楽しい。
焼岳に向かう登山客は皆無、薄暗く静かな樹林帯をさらに降る。
小屋からH200mほど降るとぬかるんだ道が続く。
しばらくすると昨日、西穂独標をピストンしたときに会った兵庫県三原高校のパーティーに追いつき、ぬかるんだ道を一緒になってぐちゃぐちゃ歩いた。
焼岳までは4つの山を登り返すらしい。今日初めての登りで振り返ると・・・・
樹林帯の中から西穂~奥穂~前穂が一望、もうたまりません。
連休なのにこの静かさ、このコースを選んでよかったと思った。
さらに登ると上高地側が開けた場所に出る。
何ともいえない静かさのなかで、うっとりと景色を眺める。
木の根をつかんで急降下すると、またぬかるみの笹原に出る。
水場の池と餌のきのこ、そして笹原・・・・熊がいてもおかしくない。
登山客が皆無なので、足音を立てさささっと通り抜ける。
今度は岐阜県川を巻いて登る。行く手右側、笠が岳が見えてくる。おぉ、立派だ。
立ち止まって見入る。
振り向くと谷一面が素晴らしい紅葉だった。
その先に、西穂、奥穂が頭を覗かせている。
いい景色だと惚れ惚れしたのだが、この辺のトラバースは要注意であることに気づく。
カメラをしまってしばらく歩くのに専念した。
笹原から行く手に焼岳が見え、振り向くと穂高~槍も一望。
静かでいいコースだと何度も思った。
途中に標識がないので感だけが頼りなのだが、H2229のピークからH2080焼岳小屋までは、まだ降るのかというほど降った。
中尾温泉口に降りているのではないかと不安になるほどだった。
だから青い屋根(焼岳小屋)が見えたとき、ほっとした。
道を間違えて登り返すほどつらいことはないですからね。
小屋に到着したら上高地から上がってくる登山客で賑わっていた。
小屋には焼岳をピストンする人のザックがたくさん置いてある。
観光客でごった返している上高地には降りたくないので私は中の湯に降りる。
重いけれどザックを背負って登り始めた。
笹原越しに焼岳がぐんぐん近づいてくる。昨日、遠望した焼岳の足元まで来たのだ。
H2393mと北アルプスの中では高くないのだが、仰ぎ見るほど大きい山である。
登らせてもらいますという謙虚な気持ちになる。
焼岳は活火山である。今なお噴煙をたなびかせているので硫黄臭がする。
焼岳のシンボル、のろしのごとくあがる頂上の噴煙間近まで来た。白ペイントの○をたどりながら上がる。
のろしの正体はこれ。ぱっくり開けた口から怖いぐらいごうごうと噴煙を吐き出していた。
硫黄がべっとりついた大岩の横をよじ登って登頂。
焼岳小屋から1時間10分、天気に恵まれ念願の焼岳に立った。
想像以上の素晴らしい景色に、何でもっと早くに来なかったのだろうと思った。
しかし、あまりの登山客に圧倒され、静かな東峰に避難した。
すると上高地が一望できた。
大正4年、地震を伴って焼岳は爆発し、流れ出した泥流が梓川を堰きとめたという。
そのときにできた大正池が真下に見える。
その大正池に向かって長く尾根筋を延ばしている霞沢岳が立派だった。
燕岳~大天井~常念~蝶~大滝山~徳本~霞沢・・・最終地点である霞沢に立つ自分を勝手に想像した。
風もなし、暖かで静かな焼岳東峰から思う存分、穂高連峰を眺めた。
新穂高ロープウェイ乗り場も、西穂山荘も、2日かけて歩いてきた稜線も一望である。
岐阜、長野、富山を区切っている県境稜線を眺められ満足だった。
さすが連休である。焼岳北峰は、まだこんな感じで混雑していた。
山頂で、中の湯に車を止めて上がってきたという安曇野在住の男性に出逢った。
しばらく山談議をしたあと、新島々まで車に乗っていかないかと誘われた。
乗せていただきたいのは山々なのだが、一応丁重にお断りした。
が、何だかお遍路のときのお接待のような気になり、結局お言葉に甘えた。
どうもこれが南峰らしいのだが立ち入り禁止である。
あと1~2週間もするならナナカマドが紅葉し、この谷は赤く染まると聞いた。
笹原の黄緑とナナカマドの赤のコントラストを想像しながら最後に谷を見上げ、樹林帯の中に入っていった。
中の湯に2:30着。
車に乗せてもらい新島々3:28発の電車に上手く乗ることができた。
天気に恵まれ楽しい2日間を山で過ごすことができました。
今年はこれで日本アルプス縦走はお終いです。
来年の夏山縦走に向けて、地元の鈴鹿でトレーニングをつみます。