2007高知(25・26)

区切り3回目の3日目 晴れ

ぐっすり休んだので快適な目覚めだった。
窓側で寝た私はベッドの上から手を伸ばしカーテンを開け、続けて窓を開ける。

「ホーホケキョ」

グッドタイミングに気をよくする私。
大きく伸びをし夫を起こした。

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朝食後、24番最御崎寺を後にする。
転がり落ちそうな室戸スカイラインを降る。
海に飛び込んでいくような開放感がたまらなく好きである。
この先のステージから誘われているような気がする。
土佐独特の「待ちゅうきね」が聞こえる。

●25番津照 (8:25~8:45)
長い階段を一気に登る。
息を切らしながら本堂前に立ち、よし今回も元気だと安心する。
こんなばかげた考えの自分に呆れた。

大師堂で同宿だったお遍路さん二人に再会する。
だが、それほど親しくなく挨拶程度である。

参拝後、門前で売られていた枇杷を買った。
10個ほどで300円。
値段はリーズナブルだが、ずっしり重たい。

室戸岬を回ってから、山の中腹横一線に袋を被った枇杷畑が並んでいる。
1巡目にここを通ったのは10月(2002年)だったので知る由もないのだが、今回こんなに枇杷の木があることに気づいた。
枇杷の実に被せられた袋が満開の花のように見えてとても奇麗だ。
収穫真っ盛りで、忙しそうに軽トラに積む作業を何度か目にした。

「こんなに美味しいなら、もっと買えばよかった」と貪欲な夫。
「重いからダメだよ。26番に登るまでに食べる分があればいいよ」

この先、しんどい急坂が待っていることも知らず満足そうに食べる夫を見て、生意気にも<こののんき助>と思った。

●26番金剛頂寺 (10:00~10:20)
標高165mをフーフー息を切らして登ると、山門前に休憩所があった。
この岬の反対側に降りるので、先にここで休憩した。

前回、この納経所で頂いた地図を今回持ってきた。
納経所でそれを見せ、この先の遍路道に変わりないか見てもらうと、じっくり眺めて一言、「大丈夫」。

懐かしい道だった。
当時は蛇に3回も出会い、泣きそうで一人駆け降りた記憶である。
お遍路に対しての気力をどれほど持ち合わせているのか、あの時は試されたに違いない。
今回は蛇に出会わず安気に歩けた。
何かお許しを頂けたような気になる。
それはまったくの私なりの勝手な考えであるのだが。
地図と前回の記憶を頼りに無事降った。

27番を降ったところにある『道の駅キラメッセ室戸』に寄った。
地元の食材が売られる中に、アツアツのはんぺんを見つけた。
昼食には早いと思いながらも、誘われるままあれこれ買った。

潮風にふかれながら、アツアツのはんぺんは何とも美味しかった。
お腹が満たされた私は、しばらく歩きたくないというやばい心境になった。
その後、腰をあげるのが本当に大変だった。

時折通り過ぎる自転車遍路をうらやましい気持で見送る。
手を挙げるだけの挨拶のときもあれば、時に大きく声を掛ける。
そんなふうに無意識で声を掛けたときのことである。

「あれれ?・・・・あれ?れ!」と私。

実に驚きの再会だった。
昨年11月に出逢った野宿遍路(歩き)だったのである。
今になって思えばお互いよく気づいたものだ。

「やっぱり会えたねぇ。あれからどうしてたの?」と私。
「3巡歩いて実家に戻り、自転車で今2巡目」と彼。

縁があるってこういうことなんだろう。
欠けた歯の笑顔は、以前よりふっくらしていた。
所帯道具も心なしか当時よりは快適そう。

「エンドレスです」と彼。
縁があればまた出逢うということか・・・・と複雑な心境で彼を見送った。

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吉良川から羽根の集落に入る途中の国道で興味を引く看板を見つけた。

    危険です。積みすぎ 寝不足 飛ばし過ぎ

何だか歩き遍路への警告に思えて苦笑した。

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羽根の集落に入り間もなく中山峠道に入る。

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手が届くところに枇杷の実がたわわになっている。
やまぶき色が何とも美味しそうである。
が、袋が被ってないものは美味しくないとか。
本当かなぁ、ひとつ食べてみたくなる。

登り始めてすぐのところに、筍をひとつごろんと乗せた一輪車があった。
筍についた土を見て、今掘ったばかりだなと私にもわかる。
この一輪車の主はどこだ?と先に進むと・・・・

「暑いなぁ、ごくろうさん」
「あぁ筍の人・・・・」藪から棒に声をかけられ、変な挨拶をしてしまった。

汗をかきかき、さらに登るとこんなものが・・・・・

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「お金はいらんぜよ」に目がとまり、中をのぞくとお接待とおぼしい品の数々。
トマトを手にし、道をふさぐように置かれている不思議なベンチに腰掛けた。
すると・・・・

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目の前にこんな素晴らしい景色が広がった。
このお接待がなかったら、このベンチをまたいで通り過ぎ、この景色を見過ごしたに違いないと思った。

     おへんろさん おつかれさん ハチミツでもなめていきや
     兄貴の熊吉がとった地元のハチミツやき元気が出るぜよ
     それでは気をつけてお四国を 土佐の自然を楽しんで行きや

こんな心温まる手紙が添えられており、土佐がいっぺんに好きになった。
気まぐれ狸と書かれた隣の箱には、凍らせたお茶があった。
なんともそのお気持が嬉しい。
トマトは甘かったし、熊吉さんのハチミツも美味しかった。
お会いしてお礼申し上げたい心境だった。

さらに登っていくと畑仕事をするおばあさんに出会った。
お金はいらんぜよのお接待のことを尋ねると、さらに上に住むお方だと教わった。
その方にはお目にかかれないだろうから、代わりにこのおばあさんにどれほど嬉しかったか気持ちをお話した。

「今日はあんたみたいなお遍路さんがたくさん通ったよ」

ゴールデンウィークだから多いのだろうという話をした。
お遍路さんが通ることを迷惑に思わないこのおばあさんの笑顔がやさしかった。
この中山峠の遍路道がちょっと変化したように感じたが、以前よりうんと楽しく感じたのは、きっとこのおばあさんの笑顔に出会ったからに違いない。

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そんな優しい気持になっていたからなのか、加領郷漁港の景色に見惚れた。
お遍路は何を思う・・・・しばらく眺めた。

奈半利に入る前の遍路休憩所に男性遍路が一人いた。
今日は暑くって歩くのもままならぬという話をしていたら、またひとりのお遍路さんがやって来た。
聞けばどちらもホテル奈半利泊。
なのに私の今宿は9キロも先・・・このとき自分の欲張りを悔やんだ。
この人たちとゆっくりできない。
早々に出発しなければならない自分を惨めに思った。

何でこんな計算ちがい?
宿に心配かけてはいけないので電話をしておいた。
そんな思いでとぼとぼ奈半利の町を通過した。

5:45ほうほうの体で27番麓の浜吉屋に到着した。

「室戸岬から来たと?それは欲張りや」

82歳になるおばあちゃんは笑顔で出迎えてくれた。
明日は早朝の涼しいうちに27番を打とう。

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夕飯後に無理を承知で・・・・

「おかあさん、朝食は何時までいいですか?」
「あんたは、ちゃんと電話してくれたから安心した。特別や」

明日は、27番打ち戻ってからの8時に朝食という特別許可をもらった。

          ・浜吉屋2階洗面所手前の部屋(6500円)
          ・歩き遍路(車遍路が多かったのでよくわからず)
          ・歩いた距離34㎞

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