吉野の桜

足を捻挫して10日、外出(山)許可は出ていないが、夫と母を誘って「吉野」に出かけた。
長年温めてきた憧れの地である。

6:30名古屋駅発(大和八木と橿原神宮前で乗換)
9:25吉野駅着

如意輪寺までバスに乗った。
満員のバスから降りたのは我々3人だけ。

如意輪寺は、吉野の地に南朝を樹立し京奪還の夢を抱いた後醍醐天皇の勅願寺で、境内に天皇稜がある。
桜は散っているが、うぐいすが鳴き雰囲気がいい。

東京から夜行バスで来たというハイカーが汗をかきながらやって来た。
聞くと、朝の6時から歩き始め奥千本からもう降りてきたという。
ルート確認し桜の情報を得た。
素晴らしい景色だと聞き、ワクワクした。

如意輪寺から展望台に向けて車道を歩いた。
すると・・・・・

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一目千本という桜が現れた。
あまりの景色の素晴らしさに何度も振り返っては眺めた。

途中、この桜の中を上がって行く登山道を見つけた。
桜の中を通って奥千本まで行けそうだ。
今回は無理だが、次回はこの道を行こうと思った。

完治していない?足のことを考えると、あまり歩けない母を連れてきたのは正解だった。
ゆっくりゆっくり中千本の展望台まで歩いた。
すると・・・・

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先ほどの桜の全体像が現れた。
滝桜が咲く上千本である。
生憎の曇り空で写りも悪いが、実際は感動する景色だった。
吉野の桜の多くはシロヤマサクラという山桜で、赤紫の若葉が出ると蕾が膨らむそうです。
濃淡があって美しいですね。

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滝桜から左に目をやると、桜の中に車道が見えた。
ここに立ち、始めて私は桜の中を歩いてきたことがわかった。

ここで昼食とした。
吉野駅前で仕入れた柿の葉寿司は美味しかった。
夫は隠し持っていた?お酒で花見を始めた。
実に贅沢な気分だった。

この先、奥千本までバスに乗るのだがバス待ち長蛇の列。
本来なら歩いてしまうのだが、母を置いていくわけに行かない。
4台のマイクロバスがピストン輸送する間、30分も並んで待った。

奥千本でバスを下車。
そこから金峯神社までの急坂が凄かった。
私は母の手を引き、夫は後ろから母を押し上げた。
それなのにこの狭い急坂を時々タクシーがエンジンをうならせ上がって来る。危ないったらありゃしない。

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参拝後、ポットの湯でコーヒータイムをした。
乗換の近鉄大和八木駅で仕入れたあんドーナツが美味しかった。

ここから先にある西行庵が今回のお目当て。
母には独りで待っててもらい、夫と更に奥に入った。

西行が3年間こもったという庵が、どんな所にあるのか見てみたかったのである。

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ずっと上がって行くのかと思いきや、途中から雑木のしげみを降る。
奥千本の桜を下に見ながらずいぶん降ると・・・・・

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広場になったところに西行庵はあった。
待賢門院に叶わぬ思いを寄せたとか様々に語られるが、自分自身を深く見つめる時間と余裕を持つにはうってつけの静かな場所だと思った。

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            写真をクリックして大きな映像で説明を読んでください

    吉野山梢の花を見し日より心は身にも添はずなりにき 

    吉野山去年の枝折の道かへてまだ見ぬ方の花をたずねむ

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    願わくは花の下にて春死なんその如月の望月のころ

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    とくとくと落つる岩間の苔清水 汲みほすまでもなきすみかかな

その苔清水がこの写真。
金峯神社で待つ母の土産にペットボトルに汲む。

西行や芭蕉もこの道を歩いたのかと思うと胸おどるものがあった。
途中で青根ヶ峰から来るハイカーに多く出会った。
その先は女人結界の地である。
やはりこれだけは守らねばならない。

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   興味のある方は、この地図をクリックしてから更に右下のマークをクリックしてご覧下さい

金峯神社に戻り、そのずっと先の蔵王堂まで歩いて降った。
母には結構きつい急坂が多いのでゆっくり歩いた。

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途中で水分(みくまり)神社を参拝する。
豊臣秀頼が江戸時代に再建したものでずいぶん古い。
並立する3殿をひとつに連ねた本殿はこの神社の独特の建築様式である。

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この西行像は1785年に作られたもので、現在は水分神社拝殿に安置されているが、もとは西行庵に置かれていたものだそうだ。

途中で見かけるポスターの写真は何処から見られる景色なのだろうと思いながら歩くと・・・・・

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とうとう出会えた。私はこの景色が見たくてたまらなかったのである。
感動の余り言葉もなく立ちすくんだ。

蔵王権現に対する信仰が献木によって全山を桜が覆い尽くすまでになった。
山上ヶ岳で見えたという蔵王権現を役行者が祀ったことに始まるのである。

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蔵王堂に着いたのは5時半をまわっていた。
戸は閉められ中を伺うことができず残念だった。

仁王門、銅の鳥居、黒門をくぐってケーブルカーで吉野駅前に降り立った。
18:38発の電車に飛び乗り、名古屋に着いたのは21:50だった。

足が疲れたとも痛いとも言わず、母はよく歩いたものだ。
夫のお陰で親孝行ができた。
楽しい一日だった。