今夏の北アルプス山行は、雨でことごとく計画がだめになり、実質、この9月が今シーズン初の登山となる。どれほどこの日を待ったことか。待たされたせいだけとは言い切れないけれど、体力の激減は否めないので奥深く入るのはちょっと躊躇する。もっとも休暇は2日しかないので縦走は諦め焼岳を選択した。
釜トンネルを抜けると、車窓にはお決まりの焼岳。いつものごとく心が踊る。
やがて大正池越しに雄大な穂高が現れた。さすがに顔がニヤけた。
帝国ホテル前でバス下車。初めて降りた帝国ホテル前の雰囲気は、夏山を諦めさせられ続けた私にはお呼びでなかった。
10:00焼岳に向けて歩く。2時間も歩くと焼岳独特の大きなガレが近くなる。
振り向けば去年10月に登った霞沢が私を楽しませてくれる。上高地から入るルートは初めてなので、また線が伸びることも楽しかった。
長い階段まで来ると、ひとりずつ慎重に降りてくるのが見えた。なかなか途切れそうにないので、そろそろ登らせてもらおうと下から交渉しようと思った矢先、ひとりの男性が登って来いと言ってくれた。登リ終えると、このハシゴ待ちで、いくつかのパーティがくっつき長い列となっていたのには驚いた。30人は交わしただろうか。この男性の機転が利くマナーは心地よかった。
上高地から3時間位で焼岳小屋に着いた。2007年、西穂の小屋から縦走したとき以来だから7年ぶり。相変わらず小さな古い小屋だった。
このまま進んで中の湯に下山できるけれど、北アルプスまで来て日帰りなんてつまらないので、本意ではないけれど今日はここで泊まることにした。ワンデイの山で泊まる経験もまたよし。
夕食まで散策したりして楽しんだ。
オーソドックスな2階の寝床。私は右奥だった。夜中にトイレに行きたくなったとしたら、人の頭を蹴飛ばし、長い髪を踏んだりして出てくることになる。こういう小屋は今では珍しい。きっとここはこのまま貫き通すような気がする。
5:30、1回戦目の夕食にありつく。定員25名のところ40人近くいたので2回戦もあった。談話室も廊下もないので、食事が終わったら寒い外か寝床に行くしかない。歯を磨いて寝床で横になった。
今回、変わったいびきを聞いた。どんないびきか上手く言葉で表現できないけれど、これは疲れるから寝ないほうがいいのではと思うような苦しそうなものだった。やがて、一般的ないびきの大合唱で、この息苦しそうないびきはかき消されたけれど、ときどき間合いからあいの手のように聞こえた。そうこうしているうちに私も眠ってしまった。夜中に目が覚めたとき、誰一人いびきはなく静かだったのには驚いた。こんなことあるんだと思った焼岳小屋だった。