2013ヒエ平~常念~大天井~西岳~燕~中房④

平成25年8月11日(日)[E:sun] その2
 
大天井ヒュッテで30分休憩したのち、喜作新道の樹林帯を降っていく。
稜線と違った花が出迎えてくれ、これまた楽しめるものだった。

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なかでも行く手左側の二ノ俣谷のニッコウキスゲ大群落は、谷底まで斜面を黄色に染めており素晴らしいものだった。

 

Dscn2858_thumbさらに今年は4~7年に一度のコバイケイソウの当たり年。登山道をはさみ、斜面を流れ落ちるように咲くコバイケイソウの群落は歓喜の声が上がるものだった。相方の山姥は、「これだけのものを見るのは、私はもうこれが最後だろう」としんみり言った。双方とも、この先のことはわからない。どうあれ、当たり年に来れてよかった。 

          Cimg3396                     コバイケイソウ

 

 

 

今回は『槍の北鎌尾根へと入る貧乏沢への入り口』を見つけることができた。ちなみに相方の山姥、ここから降りて北鎌から槍に登頂したツワモノ。どんなとこを行くのか興味本位でのぞいてみると、道なき道の急降下って感じだった。

 

そういえばこの日、ヘリコプターが槍ヶ岳のまわりをしつこいぐらい飛んでいた。見ていて物資搬入でないことはわかった。どうも槍の北鎌尾根を念入りに捜索しているように見えた私の感は、その後、上高地入山時(8/18)に当たっていたことがわかった。

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その北鎌尾根は簡単なルートでないと聞いている。入山者が少ないがゆえに、ソロでは遭難しても見つけてもらえない。それでも行きたい気持ちをおさえるにはどうしたらいいのだろう。 

 

 

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樹林帯を抜けるとビックリ平。来た道を振り返って大天井岳方面を撮影していると、我々の2日分を1日で歩くというソロの若者がやってきた。暗い道を歩いて距離を稼ぐことは、ロクなことにならないと老婆心ながら話したら、「大丈夫っすよ!」と、お気楽な答えが帰ってきた。安全を願う相手だった。それは嫌な予感のヘリコプターのせいだけではなかった。 山をなめているその姿が、私の恐怖心を煽るものだったからだ。

 

Cimg3400 天上沢に流れ込む『槍のY字雪渓』がことのほか美しく感じた。

立ち止まっては北鎌尾根を懐かしく眺める山姥の姿は、思い出はピークではなく、そこまでの線上に残るのだと感じるものだった。我々はさらにこの贅沢な景色を心に刻みながら歩いた。

 

 

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左)稜線のチングルマは果穂になっていた。
右)タカネシュロソウ(ユリ科)草丈30㎝ほど 遠望は常念岳

 

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左)カンチコウゾリナ  登山道にたくさん咲いていた。
右)ハクサンフウロ  今が盛りか綺麗だった

 

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表銀座通りとは名ばかりで、登山者は多くてこんな感じ。対向者がなければ、ほとんど貸し切り状態である。

 

 

 

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一箇所ヤセ尾根があって、両端が切れているけれど木が茂っているから恐怖感はない。慎重に行けば大丈夫だが、絶対に落ちないという保証はない。

 

 

 

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AM5:40に常念小屋を出て8時間余でヒュッテ西岳を捉える。今回はテントが多く彩りがいい。しかしこの景色は実にホレボレする。

 

 

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部屋は『4番の上』を与えられた。19000円というのはふたり分。

昨日常念小屋から予約の電話をしたときは、「満員ですよ!隣が男性かもしれませんよ!キュウキュウですよ!」とくどいぐらい念押され覚悟していたが、最終的には1人布団1枚以上あった。昨日に続きツイていた。

 

休憩後、あまり気乗りしない山姥を誘って西岳に登る。10分ほどで頂上に立つ。遮るものは何もなく、北は立山まで見えた。

 

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西岳を降る山姥。あとどれだけ一緒に来れるかな?
テント場の先の赤沢山の先に屏風岩が頭を出している。毎回新しい発見があって面白い。

 

 

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この小屋は雨水で成り立っているので、おかずのお皿は使い捨て?と思うものだった。

食堂はどこからでも常念山脈を眺められるように設計されていた。槍や穂高の小屋のように何百人も泊まれる小屋では、真似したくてもできないことだ。

最高のロケーションで食事できるのなら水が不自由なことぐらい私は我慢できる。小屋存続は大変だろうけれどいつまでも続けてほしいと思った。

 天気を狙ってまた来たいと山姥は言った。私もそれは同感だった。今度は夫と来たいと思った。
 

 

Cimg3436 夕食後、西岳から二ノ俣谷を挟んで4㎞先の常念岳足元に、私の後方3㎞に位置する槍ヶ岳の影を見つける。常念に照準を合わせ槍を投影する自然界の成り立ちには感激した。 

常念岳にいる人は、夕陽に染まる美しい槍は見えても、その足元までやってきている影槍は絶対見ることはできないはず 

常念と影槍が重なるのは、私の知識ではこの時期だけではないだろうか?雲も綺麗。 こういう楽しみ方が出来るようになるまで、ずいぶんかかったことに気付くものだった。私はそんなことを考えながら常念と影槍を眺めた。

 
 
私が山に求めているものは何かと問われても上手く答えられないけれど、今回の目的地西岳滞在は、私を満足させる条件がたくさん揃い幸せだった。

 

                                    つづく