2012西鎌尾根②

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カキ氷を2杯食べ、ホットコーヒーをポットにテイクアウトして鏡平小屋を後にした。12:52 

 

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あと1時間で稜線に乗っかるな・・・と見上げたその時、太もも内側に劇痛が走った。あっ!と思うな否や、惰性で踏み出したもう片方の足にも連鎖的に劇痛が走る。もう立っていることも座ることもできない硬直状態。痛みに操られピノキオのようだった。その痛いこと痛いこと、うろたえた。

先に樹林帯に入った山友に、大声で緊急事態を知らせるが返答がない。樹林帯は見通しも声の通りも悪く焦った。何度目かの時に山友の声がこだまのように帰ってきた。平常でないことが伝わってホッとする。

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今日何度か会った小学3年生の孫を連れたテント泊装備の男性が幸いにもやってきた。SOSを求める。すると、この症状は足の筋肉が痙攣(つる)したのだと教えてくれた。水分や塩分不足、疲労蓄積や運動不足で起こるそうだ。情けないことにすべて当てはまっていた。

差し出された残り少ない貴重な塗り薬をチューブから遠慮がちに少しもらって、私は恥も外聞もなくズボンのチャックを下げ、薬をつけた手を股につっこみ、指示通り太もも前の内側から膝に向けてよく擦り込んだ。もちろん男性に背を向けての行為だったが、気づいたら小学3年生のボクからは丸見えの立ち位地だった。おじいちゃんの指示でオバサン何やってるの?という顔でボクは私を見ていた。エライトコロを見せてしまったと反省。とりあえずゴメンねと詫びた。

痛みの峠は越えたので、丁寧にお礼を言い、コワゴワ、ソロソロと歩き出す。ほどなくして待ってくれていた山友に追いつき、孫を連れた男性に助けてもらったことを説明した。

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樹林帯を抜けると、まわりの景色を楽しむまでに回復。応急処置の塗り薬を提供してくれた男性のお陰だった。あれから孫を連れたその男性に会うことはなかった。初登山のボクは見るからにバテバテだったが、テント装備のおじいちゃんはニワカヤマヤでないとお見受けしたので大丈夫だと思った。

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2:12 弓折乗越着。

ここから見る穂高稜線の岐阜県側は危険地帯で、滑落でたくさんの生命を飲み込んでいる。遺体が上がっていないのも多いと聞く。景色を眺めながら、今回足がつった場所が安全なところで良かったと思った。危険な場所だったら、足に力が入らなくて滑落も考えられたと思う。無謀な中高年登山者と言われないようにしないといけない。北アルプスを姥捨て山と揶揄させてはいけない。山をやる以上、自己管理を疎かにしていけないと肝に命じた。貴重な体験だった。

           参考:2010年10月の様子

 

 

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2:34 雪見平には雪が沢山残っていた。アレは山容からして鷲羽岳か?そうなら私の頭の中の位地関係というか感覚がずいぶんずれていたことになる。訪れるたび山は新しい発見がある。発見は本当に楽しい。スイッチが入ってしまった私は、気がつけば先程の足の痛みを忘れてハイテンションだった。ガシガシ歩けることが楽しくて仕方がなかった。

 

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くろゆり平を超え、双六小屋のある谷に降ってきた。

Cimg1455テント場の脇にはクロユリの群生が

         Cimg1456 ハクサンイチゲや

Cimg1459 イワツメクサが出迎えてくれ、程よい疲れの心身は完全ノックアウト。北アルプスに酔っていた。アル中毒患者そのものだった。

 

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黒部五郎から縦走したときと同じ部屋を与えられた。

この先の山行に役立つ貴重な体験をした日だった。

                                     つづき